本研究の主な成果は以下の2点である。 1)最終年度は、「もの派」の中心的人物であった美術家・李禹煥について検証した。最終年度の研究の成果は以下の論文に結実している。米田尚輝「〈関係項〉について」、『李禹煥』展覧会カタログ、平凡社、2022年、208-229ページ(国立新美術館、2022年;兵庫県立美術館2022-23年)。展覧会は、李禹煥の初期から現在までの活動を概観するものであり、絵画と彫刻を分けて展示することで各々の特徴の変遷を検証した。論文では、李の彫刻シリーズ〈関係項〉の1960年代から2010年代までの展開を考察した。 2)2019年度には、言語と映像(ないしはイメージ)を主たる表現手段とする日本の現代美術家を検証し、その成果は以下の論文に結実している。米田尚輝「現代美術に潜む文学」、『話しているのは誰? 現代美術に潜む文学』展覧会カタログ、美術出版社 、2019年、12-25ページ(国立新美術館、2018年)。展覧会は、現代美術家・田村友一郎、ミヤギフトシ、小林エリカ、豊嶋康子、山城知佳子、北島敬三の6名によるグループ展である。論文では、言語芸術と視覚芸術が心的イメージという共通項によって結ばれていることを、出展作家の作品群を分析しつつ考察した。 研究期間全体を通じては、1)主に日本で活動する韓国の現代美術家・李禹煥による絵画と彫刻というオブジェクトを用いた表現を考察し、2)1990年代から現在までの日本の現代美術家による映像表現を考察した。本研究の目的であった、1990年代から現在までの日本を中心としたアジア諸国におけるオブジェクト指向の美術家、ならびに映像を主たる表現手段とする美術家の活動を理論的言説と照らし合わせて検証することは達成されたと考えられる。
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