研究課題/領域番号 |
19K00239
|
研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
本村 健太 岩手大学, 人文社会科学部, 教授 (70281946)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | バウハウス / 構成学 / ハプティック / 糸かけ曼荼羅 |
研究実績の概要 |
2019年に創立100周年を迎えた近代ドイツの芸術学校バウハウスは、当時においては近代デザインを築くほどの世界的な影響力をもっていたが、今日的意義として、現在におけるバウハウスの価値は何かを探るとともに、当時のバウハウスにおいて行われていた「触覚」に関する造形訓練に着目して、視覚だけでなく触覚を含んだ表現としての基礎造形の可能性を探ることが大きな課題となっている。そこで、昨今注目されている「メイカー・ムーブメント」とも関連して、レーザー加工機や3Dプリンターなどのデジタル工作機器の導入によって「ハプティック・ヴィジュアル」(触覚・視覚)という概念での作品化を実験的に実施しつつ、考察を深めていくことが本研究の具体的な目的の一つである。 令和元年度においては、バウハウス創立100周年に関連する企画展覧会の状況について資料収集を行うことで、今後の理論的な考察のための基礎固めを行った。また、制作を伴う実践については、レーザー加工機を導入し、まずは、プログラミングを用いた幾何学的な形体をアクリル板などを素材に加工し、それに触覚の違いとして糸などを用いて「ストリングアート」状の制作(手工芸としての「糸かけ曼荼羅」の応用)を行った。これは制作過程において、簡易的なプログラミングを手法に取り込んだ事例としても新たな構成学に資する内容を提示することになった。プログラミングにより、全体の形状、糸をかけやすい穴状のフックをデザインしてレーザー加工機でアクリル板を切り出し、それに様々な色の糸でかけ方によって変容する模様を作り出していくものである。これはデジタル工作と手工芸的な作業の組み合わせとなる。令和元年度においてはこの基礎段階として、糸かけ曼荼羅シミュレーションについて学術論文(日本基礎造形学会)を執筆した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
レーザー加工機を導入して、「糸かけ曼荼羅ボード」の試作を行った。この制作の構想段階においては、プログラミングを用いて糸かけ曼荼羅のシミュレーションを実現しており、このシミュレーションについての考察を中心に論文にまとめることとした。これは日本基礎造形学会の論文集『基礎造形028』において拙論「糸かけ曼荼羅シミュレーションに関する基礎造形 - Processing を用いたベーシックデザインの事例研究 -」が掲載された。
|
今後の研究の推進方策 |
令和元年度においては、レーザー加工機の導入により、アクリル板を切り出し、それに様々な色の糸でかけ方によって変容する模様を作り出していく糸かけ曼荼羅ボードの試作を可能としたので、次年度以降はこの方向での展開を推進していく。制作工程ではプログラミングを行い、全体の形状、糸をかけやすい穴状のフックをデザインする。これはデジタル工作と手工芸的な作業の組み合わせとなる。さらに3Dプリンターの導入も行い、多様な表現技法を検証していくことにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
レーザー加工機の導入のために前倒し支払い請求を行って使用した誤差に近いものであり、次年度使用額は22,509円である。これは翌年度における造形試作用素材の購入によりすぐに解消されてしまうものである。よって、翌年度以降の計画全体への影響はない。
|