研究課題/領域番号 |
19K00240
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研究機関 | 宮城教育大学 |
研究代表者 |
小塩 さとみ 宮城教育大学, 教育学部, 教授 (70282902)
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研究分担者 |
山本 百合子 福岡教育大学, 教育学部, 准教授 (30294846)
金光 真理子 横浜国立大学, 教育学部, 准教授 (40466941)
城島 亜子 (増野亜子) 東京藝術大学, 音楽学部, 講師 (50747160)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 伝統芸能 / 身体技法 / 教授法 / 多文化音楽理解 / 異文化理解 / バリ(インドネシア) / 和楽器 / 能狂言 |
研究実績の概要 |
平成31/令和元年度は、3回の研究会を行った。本研究プロジェクトでは、伝統芸能の身体技法の教授法に関して、理論的な枠組みに関する先行研究の整理と、具体的な事例の調査・検討という2本の柱をたてているが、毎回の研究会では、各メンバーが自分の担当に関しての報告とそれに基づく議論を行った。具体的には、金光は理論的な枠組みについて「身体」に着目した民族音楽学および音楽教育学の分野の先行研究を紹介し、自身の勤務校での授業で実施している「学生のためのガムラン体験」の様子を詳細に分析するとともに、教授者へのインタビューも実施した。小塩は仙台で行われている「こども能教室」の稽古と発表会を見学するとともに、勤務大学における「和楽器(箏)」の授業および自身が行っている「三味線自主授業」、公開講座および免許状更新講習として実施した「ガムラン入門」での身体技法の教授法について分析・検討を行った。山本は長崎県島原市における「島原こども狂言」の活動調査と、狂言の個人指導をめぐる聞き取り調査、勤務校における能狂言の授業における教授法の分析をするとともに、次年度の韓国調査の準備を行った。城島(増野)はインドネシアのバリ島における伝統芸能の伝承の場を整理分析し、伝承の場を大きく、a)地域社会(特に集落)を母体とするスコsekhe、b)個人を中心とするサンガルsanggar、c)学校、d)個人に大別してそれぞれの伝承の特徴を検討した。また現地で調査を行い、子供のためのグンデルワヤン教室を見学した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究目的と平成31/令和元年度の進捗状況を照らし合わせると、以下のことが順調に始動したと考えられる。(1)民族音楽学や音楽教育学における身体技法の先行研究の検討を開始することができた。中でも2019年秋に来日した音楽教育学のパトリシア・キャンベル教授の多文化音楽教授法については、金光・小塩が講演会に参加し、具体的な教授理念や大学での授業の様子等を知ることができ、キャンベル教授および日本の民族音楽学者や音楽教育学者とここの教授法に関して議論を行うことができた。 (2) 日本の芸能(能・狂言、箏、三味線)とインドネシアの芸能に関して、初心者、とくに子供に芸能を教授する場の調査・観察を行うことができた。 (3) 前述の項目について、コンテクストの違う場面(公共団体の主催するこども向けワークショップ、異文化理解としての音楽ワークショップ、大学の授業、伝統的な稽古)の観察を行うことができた。特に日本国内におけるガムラン教授の場については、複数の事例を観察することができ、そのうち1件については教授者への聴き取り調査も行うことができた。(4)日本およびインドネシアの芸能に関して、来年度以降により具体的に調査を行うために、伝統芸能の教授者何人かとコンタクトをとり、調査協力の返事を得た。(5)研究プロジェクトとしては初段階ではあるが、本プロジェクト開始以前からメンバーが研究している内容と関連づけながら、本プロジェクトの成果の一部について、メンバーが成果発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究について次の3つの側面から推進する予定である。 (一)前年度引き継ぎ事項:(1)今年度に調査観察を行うことができたジャンルについては、引き続き調査・観察を継続し、教授者や学習者等への聞き取り調査を実施する。可能な場合には本プロジェクトの複数のメンバーが調査に参加することで、多層的な調査と検討を行いたい。(2) 民族音楽学や音楽教育学の先行研究に関しては、引き続き情報収集と検討を行い、本プロジェクトの意義を先行研究と結びつける試みを進める。 (二)海外の事例調査:2年目と3年目には海外調査を行う予定であった。2年目は9月頃に韓国の調査を予定していたが、新型コロナウィルスの感染拡大により、現在、海外渡航が難しい状況にある。韓国の研究者と連絡をとりつつ、今年度の実施可能性については夏頃までの状況を見た上で判断する。もしも今年度の実施が難しいと判断した場合には、全体の計画を見直すとともに、(一)の事項を今年度は集中的に実施する形で研究を進める予定である。 (三)研究成果の公開:本プロジェクトでの成果の発信方法について、具体的な検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費の一部と人件費(研究協力謝金等)について、当初の計画に比べて今年度の調査が幅広い対象に向けて実施する形となり、聞き取り調査等のより具体的な調査を次年度に行うことになったために、調査に関連する謝金や物品購入について使用しなかった。この金額については、次年度の調査において、当初の予定通り、物品費および人件費(研究協力謝金等)として使用する。
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