研究課題/領域番号 |
19K00240
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研究機関 | 宮城教育大学 |
研究代表者 |
小塩 さとみ 宮城教育大学, 教育学部, 教授 (70282902)
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研究分担者 |
山本 百合子 福岡教育大学, 教育学部, 准教授 (30294846)
金光 真理子 横浜国立大学, 教育学部, 准教授 (40466941)
城島 亜子 (増野亜子) 東京藝術大学, 音楽学部, 講師 (50747160)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 伝統芸能 / 能狂言 / 身体技法 / 教授法 / 多文化音楽理解 / 地域文化の継承 / オンラインでの教授 / 新型コロナウイルス対応 |
研究実績の概要 |
令和2年度は、新型コロナウイルス感染拡大のために、当初の研究計画を実施することが困難となった。年度当初メンバーは勤務校のオンライン授業への対応に追われたが、その中でオンライン授業やオンラインレッスンで音楽実技がどう行われているかを調査する必要性を感じ、7月から11月にかけて、毎回3名程度に実践報告していただく研究会を計8回開催した。伝統芸能(イラン古典音楽、朝鮮半島のチャンゴ、インドネシアのガムランおよび舞踊、箏曲・雅楽・三味線音楽)に加えて、西洋音楽(ピアノ・声楽・オーボエ・チェロ・合唱等)の実践者にも話を伺った。身体技法の伝承において、オンラインで可能な部分(主として単純な身体運動)と、対面でないと難しい部分(身体運動と音の関わりや合奏)がどのジャンルでも存在すること、オンラインで教える場合にその点を踏まえて工夫しながら教授活動を維持していることが確認できた。この8回のオンライン授業・レッスン研究会に関しては令和3年度に報告書としてまとめる予定である。加えて、文化の枠を超えた音楽実践・音楽教授の例として、アメリカ人で日本に留学して三味線音楽を学び、現在、日本人に日本音楽の授業を行っているコリーン・シュムコー氏の実践を伺うオンライン研究会を開催した。 対面での研究活動としては、多くの芸能活動が中止される中で、感染対策を工夫しながら開催された「こども教室」についての活動を中心に調査を行った。長崎県島原市の自主文化事業として開催されている「島原こども狂言」は、自治体や地域の人々との協力の中で、福岡市から狂言師を講師として招いて伝承活動が行われており、愛好家向けの稽古事とも、学校における芸能伝承とも異なる事例である。3月に開催された令和2年度の成果発表会にあわせて全メンバーが島原市を訪問し、発表会を観覧するとともに、指導者および自治体や地域の協力者にインタビューを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの感染が拡大し、多くの音楽・芸能活動が中止あるいは規模縮小を余儀なくされている中で、令和2年度は当初の研究計画とは異なる形で進めることとなった。当初は、初年度に実施していたインドネシアバリ島における調査や韓国の学校教育における伝統芸能の伝承についての調査を実施する予定であったが海外調査は実施できず、また日本国内における調査も、予定していた活動の中止や規模縮小(人数制限)等で実施できないものが多かった。 しかし当初予定していなかった「オンライン授業・オンラインレッスンにおける音楽・芸能の教授」に関する8回のオンライン研究会および文化の枠を超えた音楽実践・音楽教授実践者を招いてのオンライン研究会から、身体技法の伝授における身体運動と空間の関係性や、教授者・学習者の生まれ育った文化と教授・学習する音楽文化との関係など、本研究における重要な視点について考えることができた。 また、長崎県島原市の自主文化事業「島原こども狂言」について、稽古および発表会の観察を行うとともに、指導者・受講生の保護者・地域の協力者などへのインタビューも含めて調査を行うことができ、今年度も継続して調査を行う予定である。 以上のような研究状況を総合した結果、本研究課題の進捗状況は「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究については、以下のように推進する予定である。 (1)令和2年度は国内での調査をさらに進めるとともに、これまでの2年間の調査の整理を行う。その際に、「能楽(能・狂言)」と「ガムラン」という文化的にも音楽的にも異なる2つのジャンルに焦点を当て、通常の芸能の伝承とは異なる「子どもを対象とした教室」において、身体技法の伝授がどのように行われているかを対照しながら調査・研究を行っていく。「能楽」に関しては、昨年度調査を行った「島原子ども狂言」について継続して調査を行うとともに、他地域での「こども教室」の運営や教授法についても調査を行いたい。「ガムラン」に関しては、インドネシアでの伝承については本研究課題の初年度に行った調査結果を中心に考察を行い、あわせて日本国内での伝承について追加調査を行う予定である。 (2)当初予定していた海外調査は、最終年度となる令和4年度の実施を現時点では考えている。ただし新型コロナウイルスの感染状況によっては、研究期間の延長も視野に入れるつもりである。最終的に、今年度実施する調査および来年度に実施する海外における芸能伝承調査の成果を、民族音楽学や音楽教育学の先行研究と結びつけ、身体技法の伝承が、社会的・文化的なコンテクストといかに関連しているかという視点も加えつつ、研究成果を学会発表や論文、および一般向けの講座等の形で公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた海外調査が、新型コロナウイルス感染拡大のため実施できなかったことが主たる理由である。次年度使用額については、海外調査が実施できる状況になった時点で、当初の予定通り旅費として使用する予定である。
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