本研究は「触覚的イメージ」をキーワードとして、制作実践者の視点を踏まえ、触れる美術鑑賞の足掛かりとなる研究基盤構築を目的としており、【A】触覚性に主眼を置いた彫刻表現研究、【B】国内外の触れる鑑賞支援の実践に対する調査、【C】触れることを前提とした展示及び鑑賞支援の実践を研究活動の柱としている。 2022年度の活動実績として、【A】に関しては、表現研究の成果として第51回日本彫刻会展覧会に作品《boolean 1.1》を、第9回日展に作品《singing figure》を出品した。共にモルタルを主材とする彫刻作品で、モルタルによる彫刻の型取りと直付けによる制作法の実践例となった。技法についてまとめた論考は、2023年度に刊行される『彫刻研究誌 アートライブラリー No.24』への投稿を予定している。 【B】に関しては、特に、1990年代前半から活動を行っていた蒼土会に焦点を当て、その活動の調査を行い、記録を資料としてまとめた。蒼土会メンバーの作品については、月刊『視覚障害-その研究と情報』の表紙としてとりあげながら、「触れるアート鑑賞室」において触覚的鑑賞を含んだ情報発信を行った。 【C】に関しては、銀座ギャラリー青羅において「“触れる”アート GINZA 2023」を、千葉県立美術館において「彫刻に触れるとき 『さわる』と『みる』がであう彫刻展」を企画し、鑑賞者が作品に触れられる展示を実施した。千葉県立美術館での展覧会に際しては、関連事業としてシンポジウム「彫刻をさわる時間ー『さわる』と『みる』の結節点ー」の企画に携わり、彫刻芸術の触覚性に関する討議を行った。
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