研究課題/領域番号 |
19K00242
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
長嶋 由紀子 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 研究員 (80468850)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 文化政策 / 文化観光 / 文化資源 / 内発的発展 / フランス |
研究実績の概要 |
本研究は、フランスの文化観光に関わる公共政策を文化政策研究の立場から分析するものである。同国における地域文化政策と文化観光との持続的な接続を解明し、来訪者を迎え入れながら文化資源に立脚した内発的発展を実現する地域社会の活動に並走する文化政策のあり方を析出することを目的としている。 制度分析では、フランスの地方制度改革が完成した2016年以後の国と自治体の動向に焦点を当てる。そこでは文化観光をめぐる多様なアクターをつなぐ枠組みが整えられているが、その組織や方法論を明らかにする。また、事例研究を通して協同の方向性を示す目標やテーマ設定を具体的に掘り下げ、地域社会の持続的発展に資する文化観光の特徴と並走する地域文化政策の方針を示す。 2020年度は、新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大により、計画していた現地調査はいずれも実施不可能となった。さらにこの状況下では、新たな課題も浮上した。現状では日本で入手可能な情報によりながら、以下の2点を重点的に探究している。事例研究は2021年度前半に学会発表予定である。 1)公共文化政策全体の構造変化: COVID-19は、フランスにおいても文化観光推進をめぐる文脈を激変させた。さらに、同国の文化政策全体にも大きな構造的変化をもたらしている。そのため2020年度は、おもに文化省が発信する情報に依拠しながら、国レベルの文化政策の方針と組織の変化を継続的に観察した。 2)文化観光と文化振興の循環に関する事例研究:日本の「文化観光推進法」(2020年5月施行)は、文化観光の経済効果が「文化の振興に再投資される好循環」を創出することを目的としている。これを踏まえた国際比較の観点から、文化観光が地域文化振興に持続的に再投資されるフランスの事例を選択し、当該自治体文化政策の歴史と基本理念を分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウィルス(COVID-19)感染拡大により海外渡航が制限される状況が長期化したため、2020年3月、同年8月、2021年2月に計画していた3回のフランス調査はいずれも実施不能となった。そのため研究計画の実施に大いに影響が出ている。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルス感染をめぐる世界的な状況改善を待ちつつ、当面は文献情報ベースで研究を進める。2021年度は、これまでに収集した資料やデジタルアーカイブ情報の分析成果を学会等で口頭発表し、さらに電子媒体文献などを新たに購入して分析を進める。 COVID-19は、フランスにおいても文化観光推進をめぐる文脈と文化政策全体に構造的な変化をもたらしているため、最新動向の把握整理を継続する。とくに2021年1月に大規模な組織改革を発表した文化省の文化観光担当部署を含む部局に注目し、入手可能な最新情報を把握分析しつつ、「コロナ後」のフランス調査再開に備える。 また上記と並行して、本研究課題の鍵概念である「内発的発展」に関する国内外の論考を収集分析して論点を再整理する。その上で、日本における地域の文化資源に基づく内発的発展の実現事例や、市民社会と協働して地域文化や芸術活動の再発見・再評価を促す旅の提案を発信する地方自治体の事例を選定し、国内移動状況の改善とともに、現地での聞き取りを行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外渡航制限により実施できなかったフランス調査予算が次年度使用額となった。状況が変化して可能となった段階で、本調査を実施し、旅費として使用する計画である。
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