研究課題/領域番号 |
19K00250
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研究機関 | 同志社女子大学 |
研究代表者 |
筒井 はる香 同志社女子大学, 学芸学部, 准教授 (20755342)
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研究分担者 |
山名 仁 和歌山大学, 教育学部, 教授 (00314550)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | フォルテピアノ / イギリス式ピアノ / ダンパー / アーティキュレーション / ペダリング |
研究実績の概要 |
本研究は,検眼楽器歴史研究の一環として,18世紀,19世紀におけるイギリス式ピアノの止音装置のダンパーの変遷と,ペダリングを含むピアノ演奏法との関わりを解明することを目指すものであった. 今年度は、イギリスのRoyal Academy of Music, The Benton Fletcher Collection(筒井・山名),オランダのEdwin Beunk Colleciton(山名)等において,製作年代,形状の異なるフォルテピアノを,ダンパーの変遷と止音効果との関わりに注目して調査した.その結果,1820年代から1840年代にかけてダンパーの素材がクロスからフェルトに変化したことが確認された.なお演奏許可が得られた楽器については,ジョン・フィールドおよびショパンのピアノ作品の一部分を演奏した. ダンパーの素材が変化し,音がよく止まるようになったことは,演奏に影響をもたらしたと考えられる.クロスのダンパーをもつピアノとフェルトのダンパーをもつピアノとで,低音に音の跳躍があるアルペジオの音型を楽譜の指示通りにペダルなしで演奏したところ,前者ではタッチとタイミングをコントロールすることによって,音楽の流れを細分化させることなく,低音の動きによる和声の変化と対位法的構造を明確に表現することができた.しかし後者においてはペダルのオン・オフがはっきりとしており,特にオフの指示の箇所については全音域において音と音の隙間が目立ち,ペダル使用箇所の拡大を図らない限り,音楽の流れが細分化されてしまうということが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,新型コロナウイルス感染症の位置付けが2類感染症から5類感染症に移行し,渡航が現実的となったことから,研究計画書に示した欧州の博物館や個人コレクションで調査を行うことが可能となり,予定していた調査を遂行することができたからである.また現地では博物館の学芸員や楽器管理者とコンタクトを取ることができ,修復記録やダンパーの素材について追加でインタビューをすることができた.さらに,一部ではあるが演奏が許されたことから,ダンパーの変遷と演奏法との関わりについて具体的に考察する手掛かりが得られたためである.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,止音装置と演奏法との関わりを演奏実践の観点から明らかにすることを目的とする.同一曲による比較演奏の分析結果は,論文または公開講座として公開される予定である.さらにダンパーの素材が変化した時期について現段階では1820年代から1840年代と開きあるが,この間に作られたより多くの楽器を調査することでより正確な時期を特定することが可能になるのではないかと考えている.そのため現存する楽器の調査も引き続き行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
「新型コロナウイルス感染症の影響に伴う科研費(基金分)の補助事業期間再延長」の申請をし,これが承認されたため.2024年度は公開演奏会およびその録音にかかる費用に充てる予定である.
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備考 |
サブタイトル:「捧げまつる感謝の歌を ―神と共に生きた作曲家 中瀬古和―」
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