研究課題/領域番号 |
19K00255
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研究機関 | 京都市立芸術大学 |
研究代表者 |
滝口 洋子 京都市立芸術大学, 美術学部/美術研究科, 教授 (70336725)
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研究分担者 |
吉田 雅子 京都市立芸術大学, 美術学部/美術研究科, 教授 (40405238)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 祇園祭 / 鷹山 / 衣装 / デザイン / 祭礼文化 |
研究実績の概要 |
本研究はユネスコの無形文化遺産である京都の祇園祭に関する研究である。 祇園祭の曳山の一つである鷹山は、江戸時代に暴風雨などによって大半が損壊してしまった。鷹山が市内の巡行に復帰する際に必要な衣装(法被・浴衣・帯など)、小物類、裾幕(山車の一番下に用いる幕)などに関して理論的研究を行い、それに基づいてデザインを起こして実物モデルを制作することを目的とする。3年計画の1年目にあたる2019年度は、音頭取り(曳山を曳く人々に合図を出す係)と車方(山車の車輪の回転を制御する係)の衣装等の調査と制作を行った。 調査の結果、以下が判明した。音頭取りは多くの曳き手を束ねて巡行の合図を送る係であるため、衣裳は浴衣の形状で人目につきやすい大胆なデザインが用いられる。山車を象徴する主題をモチーフとし、モチーフをリピートすることはあまりない。色彩は白と紺の組み合わせが多い。車方は車輪の操作を行う専門職で、その法被に用いられるモチーフは車輪に関係するものが多い。油にまみれることもあるため、地色は濃色が多い。現在はこの傾向から外れたものもかなりあるが、それはいたずらに華やかさや面白さを求めることに終始する傾向がある。従って、本研究では以上の特徴を踏まえつつ、鷹山を象徴するモティーフを組み込み、音頭取りと車方が果たす役割を衣裳を通して視覚化するとともに、これらの人々が鷹山に所属することが一目でわかるデザインを制作した。具体的には、音頭取りの衣裳の前面に飛翔する鷹、背面にその羽先と鷹山の文字を大きく配した。地は紺、文様は白で、遠方からも視認できるようにした。車方の法被は、前面に車輪の一部、背面に2つの車輪の本体と、円形の鷹山の紋を配した。地色は紺で、文様は白上がりである。以上は京都市立芸術大学の教員と今後祭礼を担ってゆく若い世代の学生が主体となり、鷹山保存会と緊密に連携を取って制作した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に計画した内容はほぼ順調に遂行することができた。年度末はデザインを現物に落とし込む最終段階にあり、4月末には制作モデルが完成しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画では、2020年度は裾幕(山車の下方につける幕)のデザインを行う予定であったが、コロナの影響によりこれが難しくなった。この種のデザイン制作は教員・学生・祇園祭の鷹山保存会の方々との緊密な連携が不可欠である。教員と学生は遠隔授業などを通じて連携することも不可能ではないが、保存会の方々にはそのような設備がなく、連携することが大変困難な状況にある。そのため、複雑な連携が必要な裾幕のデザインは2021年度に延期し、2020年度は祭礼に用いる小物類などに方向を切り替えて、鷹山を通して祭礼文化継承のためのデザインを考えてゆきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
サンプルの納品が新型コロナ感染拡大の影響で1ヶ月程度遅れ、2020年度の執行となったため.
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