本研究はユネスコの無形文化遺産である京都の祇園祭に関する研究である。祇園祭の曳山の一つである鷹山は、江戸時代に暴風雨などによって大半が損壊してしまった。鷹山が市内の巡行に復帰する際に必要な衣装小物類、裾幕などに関して調査を行い、それに基づいてデザインを起こして実物モデルを制作することが本研究の目的である。 本計画は3年間の計画だったが、コロナが流行したため1年間延長した。最終年度にあたる2022年度はこれまでの研究を総括し、一般の読者にもわかりやすい、ビジュアルを豊富に用いた報告書を作成した。 日本学術振興会の科学研究費は2019年度から2022年度までだが、本プロジェクトはそれよりも早く、2017年から始まった。2017年度から2022年度までは一続きのプロジェクトで、その一部だけをまとめても意味がない。そこで、報告書は2017年から2021年までの5年間の内容を総括した。 2017年度は、鷹山が祭礼巡行に復活した時に、曳き山を曳く人々(曳き手)が着用する衣装と扇子をデザインした。2018年度は、囃子を奏でる囃子方の衣装をデザインした。2019年度は、曳き山の進行に関わる合図を出す音頭取りの衣装、また曳き山の進行方向を操作する車方の衣装のデザインを行った。2020年度は、コロナが蔓延したため急遽計画を変更し、鷹山の小物類のデザインを行った。少しコロナが落ち着き始めた2021年は、曳き山の一番下にかける裾膜をデザインした。 2022年度の報告書では、これらのデザインに関連する一連の研究を、第一段階の史料調査から、現状のデザイン分析、デザイン出し、及び最終デザインの修正までの全てのプロセスに渡って、視覚的資料を豊富に用いて解説した。そして鷹山が2022年度に祇園祭の巡行に約200年ぶりに復帰を果たした際に、これらの品々が祭礼の中で実際に用いられた記録写真を、報告書の中に多数掲載した。
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