研究課題/領域番号 |
19K00261
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研究機関 | 京都橘大学 |
研究代表者 |
阪本 崇 京都橘大学, 現代ビジネス学部, 教授 (20340458)
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研究分担者 |
永島 茜 武庫川女子大学, 音楽学部, 准教授 (00509169)
小林 真理 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (40257176)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 文化政策 / 実演芸術団体 / 公的支援 |
研究実績の概要 |
2019年度については、以下の3点についての研究を行った。 1)小規模オーケストラ団体の組織的特徴と運営実態についての調査:団体の概要と構成員、法人格、経費、支援の状況から日常的な運営の方法を問うアンケート調査を35団体に対して行い、10団体からの回答を得た(同様の調査を予備的調査として採択前に2件行っている)。結果については、現在集計を行っているところであるが、これとは別に実施した実地調査を6件による結果を合わせて小規模芸術団体の設置経緯の多様性や支援に対する考え方の多様性が明らかになりつつある。 2)オーケストラ団体運営における組織形態に関する検討:公益法人組織を採用している団体について、公開されている資料を元に、財務の傾向について検討を行った。海外の団体と比較しても、①寄付獲得にむけた獲得に向けた努力が十分ではない、②財務関係の専門家を配置していても財務関係の体質に変化が見えないなど、公益法人改革の目的が十分に達成されていないことが明らかになった。この調査から小規模オーケストラの運営継続に必要な資金獲得の方法や法人格のあり方について検討中である。 3)補助事業の一環としての教育事業のあり方についての検討:子どもを対象とした助成公演会場における教育的取り組みについて参与観察を行った。フランスの音楽指導者国家資格(DUMI)の手法を取り入れ、来場した子どもと保護者を対象に演奏会前後に、①演奏曲目のモチーフ、②音楽作品における表現、③音高への関心を高めることを目的に、参加型音楽活動を実施した。開演前の音楽的導入は成功したが、参加者に対する継続的な追跡調査・観察による評価が困難であるなど事業ごとに助成を行うことの課題が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究が遅れている理由は、次の3点にまとめられる。 1)申請時、研究代表者は学部長職に就いており、任期途中でもあったため、職務負担に大きな変動はないものとして計画を立てていた。しかしながら、2019年度より副学長職に就くこととなり校務負担が増えたため研究の開始時期が遅れるなどの影響があった。 2)10月からアンケート調査を開始した。回答率が必ずしも高くならないことは織り込み済みであり、書面による督促、電話による督促、現地訪問による代替を順次行うことを予定していたが、書面や電話による督促の効果が予想に比して小さかった。 3)1月後半以降のコロナウィルス感染の拡大により、当初から予定していた実地調査の一部(2,3月に集中して行うことを予定していた)、および、2)で記したアンケート調査で回答が得られなかった団体に対する調査による代替が実施できなくなった。 以上の3点については相互に関連しているが、とくに1点目に上げた代表者の役職の変化によって研究が後半にずれ込んだことと、3点目に上げたコロナウィルス感染拡大の影響が全体としての遅れを決定づけたものとなった。
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今後の研究の推進方策 |
進捗はやや遅れているが、当初から4月から7月の期間については多数の対象に対して調査を行うことは予定されていなかったため、現状では深刻なものとなっていない。したがって、現在のところは、事前に立てた計画に従って研究を進めつつ、遅れている調査については、本年度の8月以降に、従来計画していた部分に追加して行うこととなる。それまでの間については、2019年度に収集した資料を基礎に、小規模オーケストラの組織的特徴や、外部諸主体との関係などを整理し、オーケストラ団体の経済状況や行動原理について理論的に検討するためのベースを構築する。以上のように研究を行うことで、全期間を通じてみれば遅滞なく研究を行うことができると考えている。 ただし、コロナウィルス感染拡大の影響等により、本年度後半から来年度前半にかけても実地調査を行うことができない可能性がある。この場合には、研究期間の延長を検討するか、もしくは、研究方法の変更を行う必要が出てくる可能性がある。一方で、実演芸術団体は、コロナウィルス感染拡大による経済的影響を最も大きく受けている領域ともされており、公的支援についての課題もこれまで感化されていた部分が大きくクローズアップされつつある。研究を進める中で、このような点についても検討する必要が生じた場合には、予算の範囲内で追加調査を行ったり、理論的検討の範囲を広げたりする必要があるため、この場合にも研究期間を延長する可能性がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の役職が変化したため、2019年度前半について実質的に研究に入ることができず、調査全体が遅れることが予想された。そのため、当初予定していた調査の一部を2020年に行うことにした。2020年度は、当初から計画されていた調査に加え、2019年度に行うことができなかった調査も行う予定であるが、新型コロナウイルス感染拡大の影響によっては、調査方法の再検討や、調査期間の延期を検討する必要がある。オーケストラ団体の調査においては、講演会等の運営状況等を実際に見る必要もあり、すべてをWeb調査等に変更することはできないが、調査の一部についてはそのような形に変更することも検討したい。
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