研究課題/領域番号 |
19K00265
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研究機関 | 九州産業大学 |
研究代表者 |
内山 敏典 九州産業大学, 経済学部, 教授 (10151903)
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研究分担者 |
釜堀 文孝 九州産業大学, 芸術学部, 教授 (60320149)
黒木 宏一 九州産業大学, 経済学部, 講師 (00618150)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 伝統産業 / アンケート調査 / 多重分類分析 / 消費者意識 / 生産者意識 / 伝統工芸品 / 地域間比較 |
研究実績の概要 |
2019年度の研究代表者 内山の研究は、アンケート調査に基づくデータで比較分析上、すべて多重分類分析による計量分析を行った。 まず、「博多織需要に関する成人女性意識の計量分析」(査読付)で、九州地域の成人女性の意識調査の分析から、(1)博多織の技術を残すために、高付加価値の帯などの博多織製品を生産すること、(2)低価格で品質の良い博多織小物を生産すること、3)住宅企業とのコラボレーションで装飾品としての博多織を生産すること、この3点が有効との結論を得た。 つぎに、「伝統工芸品久留米絣の需要構造分析」で、九州地域の成人男性と女性の意識調査の分析から、(1)潜在的需要(久留米絣を知っているが、所有していない)は世帯年収が平均的な男性であり、(2)作務衣やもんぺを持っている消費者は、高世帯収入の自営の人々であり、(3)トートバック等の小物製品需要は会社勤めの人々であった、との結論を得た。 さらに、「アンケート調査に基づく専業主婦の陶磁器需要分析」(依頼論文で、査読付)では、世帯の購入主体である全国の専業主婦の陶磁器需要分析から、(1)“数年1回・それ以下で購入”、(2)“割れたとき・消耗したときに購入”、(3)“陶磁器は購入しない”、との3区分に分類されるとの結論を得ている。 また、研究分担者である釜堀は伝統的工芸品の新たな市場として九州に年間 500万人が訪れるインバウンド需要に注目し、訪問客の推移、国別割合、消費金額などを整理し、商品戦略のためのターゲット、コンセプト、商品構成について提案を行った。もう一人の研究分担者である黒木は今日の伝統的工芸品に対する消費者意識を改めて明らかにするため、アンケート調査データの解析を行い、陶磁器の品質と価格についての消費者意識を整理し、加えて家具の価格ついての消費者意識の特徴を比較分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度計画していたアンケートを予定通り実施するとともに、調査データをもとに計量分析を実施した。研究成果として、研究代表者は単著論文3編、研究分担者(黒木)との共著論文1編、研究分担者の釜堀は単著論文1編、同黒木は共著論文2編をそれぞれ公刊した。これらの研究成果から、「当初の計画以上に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度のアンケート調査データに基づく伝統産業の消費者意識の需要構造分析は当初の計画以上に進展したので、2020年度は公統計データに基づく理論的かつ計量的分析を行う。そのような分析を行う理由としては、2019年度のアンケート調査データから、九州地域の伝統産業の消費者意識の需要構造はある程度把握できたが、このマイクロデータから新たなる消費行動理論を導き出すためには公統計データとの関連性が重要となることを理解できた。そこで、2020年度は公統計データから九州地域の伝統産業に該当する品目について、つぎのように研究を進めていく。 (1)伝統産業は景気変動や社会情勢に影響を受けやすいので、公的データを用いて伝統産業の消費者行動における新たなるラチェット効果の理論の構築が可能かどうかを計量分析からの検証を行う。 (2)この公的データ分析を補強するために、2019年度の研究代表者と研究分担者の研究成果を体系的に関連付けた理論構築を行いたい。 以上のような2020年度研究のために、学際的な学会出張によって情報収集を計画しているが、「新型コロナ」のためにその見通しが立たないケースも生じる。その場合、伝統産業の国内外の情報をWebを通じて極力収集し、「新型コロナ」の流行が収束した段階で出張による情報収集に努めたい。
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