アマチュア科学は、科学の専門職化が進んで以降の長きにわたる市民の科学参加の形態である。その特徴は、職業的科学者とアマチュア科学者である市民との間で協働と分業がなされてきたことであろう。ただし、日本ではアマチュア科学がほとんど注目されてこなかったという経緯がある。他方、海外においては、先行研究がいくぶん蓄積されているものの、近年よくとりあげられる「市民科学」(Irwin 1995)ほどの注目はなく、また、職業的科学者とアマチュア科学者との「協働」という視点はかならずしも十分に検討されていない。しかし、アマチュア科学は、単純な「専門家vs.非専門家」の図式を外れており、現代における科学への市民参画についても示唆に富むと考えられるところである。本研究は、以上の問題意識をもとに、職業的科学者とアマチュア科学者である市民との間で協働と分業がどのように行われてきたのかを解明しようとするものである。研究期間の初期には、アマチュア科学がこれまでどのように分析されてきたのかについての文献調査、関連する営みで昨今興隆しているクラウドファンディングや市民科学の分析視点を知るための文献調査を実施し、今後の実地調査にむけた検討を行なった。その後、新型コロナ禍により予定していた実地調査を行うことができなくなったため、コロナ禍においても実施できるような調査計画への変更を検討した。科学へのクラウドファンディングに関する調査研究にまず着手した。最終年度までには、アマチュア科学者と職業的科学者がともに活躍している学会をいくつか特定し、論文発表や学会発表、学会役員等にどのように関わっているかを調査した。
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