研究課題/領域番号 |
19K00270
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大塚 淳 京都大学, 文学研究科, 准教授 (60743705)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 生物学の哲学 / 因果モデル / 自然変換 / ニッチ構築 / 進化ゲーム理論 |
研究実績の概要 |
本年度も、前年度に引き続き、因果モデルの同一性についての概念的・形式的研究と、それをベースにした進化モデルの構築・応用という2側面から研究を行った。
因果モデルの同一性については、共同研究者とともに、因果モデルをモノイダル圏の関手として捉え、その「同じさ」(同型性)を関手間の自然変換ないし自然同型として定式化した。これにより、粒度が異なる因果モデルが同じ対象を持つ、ということを厳密に扱うことができるようになり、また一方のモデルへの介入が他方のモデルの介入へと整合的に翻訳することができるようになっただけでなく、与えられた因果モデルを抽象/粗視化するための条件も策定できた。この結果は機械学習系国際会議(CausalUAIおよびCLeaR)で発表を行い、そのプロシーディングスに掲載予定である。
進化モデルへの適用については、ニッチ構築や環境の選択など、生物や環境との多様な相互作用および共進化をモデル化し、またその進化理論についての含意を考察した論文をスペインの生物学者・哲学者と共同で執筆し、専門誌に投稿した。また同様のモデルを、進化ゲームの文脈に適用することで、進化的ゲーム理論の因果的解釈をすすめる共同研究を、フィンランドの生物学者と進めており、6月末を目処に論文を執筆する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
コロナ禍ではあったが、オンライン会議などにより共同研究および国際会議発表などを行うことにより、全体的に順調に研究を進めることができた。特に、因果モデルの同一性についての研究は、上述の結果を持って一通りの完成が見られたと判断している。進化動態の適用についても、生態学的な側面については論文が完成し、現在は査読結果を待っているところである。
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今後の研究の推進方策 |
当面は、上述のゲーム理論と因果モデルの統合についての共同研究を進め、論文を完成させることを目標とする。また因果モデルの理論的研究については、同一性基準を考察することにより、因果モデルを介入モノイドによって表すという視座が得られた。今後はこのアイデアをより具体的にしていくよう努めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により共同研究および学会参加が軒並み取りやめとなり、予算計画の大部を占める旅費の支出がゼロになっている。その分をオンライン上での研究助言で埋め合わせしたため、謝金の支出が増加している。また旅費費用の削減により、残金が生じ、次年度に延長・繰越となった。
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