本研究による成果は「人間が心身に抱える苦痛への対処」という意味で本来的には同じ動機を持つ宗教と医療とが歴史的にいかなる手段を手にしてきたのか、という取り組みの経緯を対象にしている。したがって、いわゆる精神療法にとどまらず、今なお多様に存在あるいは出現する「非医学的(非科学的)な治療法」とされるものが、それに関わる人々の立場によって容易に位置づけを変化させるものであることを社会が認識したうえで慎重に対峙するための学術的根拠を提示する。また現代社会が「宗教も医療も益と害いずれも生み出す可能性がある」という現実を踏まえたうえでそれぞれの利点を活用することの重要性を提起するものである。
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