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2019 年度 実施状況報告書

ヴェサリウスの解剖学は独創か、どこまで模倣か―ガレノス解剖学の解読による再評価

研究課題

研究課題/領域番号 19K00276
研究機関順天堂大学

研究代表者

坂井 建雄  順天堂大学, 保健医療学部, 特任教授 (90114488)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワード骨 / 関節 / 骨格 / 解剖学史 / 医学史 / ガレノス / ヴェサリウス
研究実績の概要

申請者はガレノスの解剖学文書のうち、各論的な文書(骨、神経、血管、筋)をKuhn版ガレノス全集(1821-33)のテキストから日本語訳をしていた。今回は新たに最新のギリシャ語原典版(Garofalo and Debru, 2005)を入手し、テキストの英語訳を完成した。ヴェサリウス『ファブリカ』(1543)については最新のファクシミリ版(雄松堂, 2015)およびRichardsonによる英語訳全5巻(Norman, 1998-2009)を入手し、ガレノスの解剖学の引用状況と記述内容の検証を行った。
さらにガレノスとヴェサリウスの骨学の知見を、現在に至る歴史的な解剖学文書と比較検討して、骨学の歴史的な発展過程を調査している。具体的にはガレノスに先行する古代の文書では『ヒポクラテス集典』の「人体の部位」、「骨折について」、「関節について」、ルフスの「骨」と「部位の名称」、ケルススの『医学についてDe medicina』、ヴェサリウス以前の文書ではアヴィケンナの『医学典範Canon』、ヴェサリウス以後の解剖学書ではボーアンの『解剖劇場Theatrum anatomicum』(1605)、バルトリンの『改新解剖学Anatomia reformata』(1641)、チェセルデンの『骨学Osteographia』(1733)である。また骨学に関する解剖学用語の中にガレノスの記述に起源を持つものが少なからず見いだされることから、現代の解剖学の視点から骨学の歴史についても調査を行っている。
さらにガレノスの他の解剖学文書の日本語訳が進行中であり、本研究の主要なテーマであるガレノスの解剖学の理解を助けている。共同研究による『身体諸部分の用途について』全17巻のギリシャ語原典からの翻訳であり、共同研究による『解剖手技』全15巻のギリシャ語とアラビア語原典からの翻訳である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ガレノスの各論的な解剖学文書(骨、神経、血管、筋)を最新のギリシャ語原典から英語訳をすることが、本研究の主要な課題の一つである。本年は骨の文書の英語訳を予定していたが、順調に進捗して翻訳を完成することができた。またヴェサリウスの解剖学書の対応する記述についても検討がほぼ終わっている。さらにガレノス以前からヴェサリウス以後、現代に至るまでの骨についての解剖学的知見についても調査し、ガレノスとヴェサリウスの骨学を解剖学の歴史の中に位置づける見通しがついてきた。
これらの知見は、申請者による最新の医学史書『図説 医学の歴史』(医学書院, 2019)の中にも反映され、また日本医史学会総会での理事長講演の内容にも含まれている。

今後の研究の推進方策

来年度以降に予定している、神経、血管、筋肉についてのガレノスの解剖学文書を、最新のギリシャ語原典からの英語訳を行っていく。また記述内容で関係の深いガレノスの解剖学書『身体諸部分の用途について』全17巻、『解剖手技』全15巻の原典文書(ギリシャ語、アラビア語)からの翻訳も共同研究によって進行中であり、この知見を合わせてガレノスの解剖学文書の理解を深めていく。
ヴェサリウスの『ファブリカ』との比較検討は、英語訳を用いて行っていく。ヴェサリウス以前および以後の解剖学書の収集を続け、解剖学の歴史の中にガレノスとヴェサリウスの解剖学を位置づけていく。
英語訳の刊行については、欧米の出版社と交渉を進めている。

次年度使用額が生じた理由

本年度は研究に必要な書籍などを研究費の範囲内で購入することができた。若干の金額が残ったが、購入を希望する書籍があったが、金額面で折り合わないために今年度の購入は差し控えて、来年度の研究費で購入することとした。

  • 研究成果

    (27件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (11件) (うち招待講演 6件) 図書 (6件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Anatomic characterization of the femoral nutrient artery: Application to fracture and surgery of the femur2020

    • 著者名/発表者名
      Kawasaki Yuto、Kinose Shota、Kato Kota、Sakai Tatsuo、Ichimura Koichiro
    • 雑誌名

      Clinical Anatomy

      巻: 33 ページ: 479~487

    • DOI

      10.1002/ca.23390

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Morphological Processes of Foot Process Effacement in Puromycin Aminonucleoside Nephrosis Revealed by FIB/SEM Tomography2019

    • 著者名/発表者名
      Ichimura Koichiro、Miyaki Takayuki、Kawasaki Yuto、Kinoshita Mui、Kakuta Soichiro、Sakai Tatsuo
    • 雑誌名

      Journal of the American Society of Nephrology

      巻: 30 ページ: 96~108

    • DOI

      doi: 10.1681/ASN.2018020139

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Three-dimensional architecture of pericardial nephrocytes in Drosophila melanogaster revealed by FIB/SEM tomography2019

    • 著者名/発表者名
      Kawasaki Y, Matsumoto A, Miyaki T, Kinoshita M, Kakuta S, Sakai T, Ichimura K
    • 雑誌名

      Cell and Tissue Research

      巻: 378 ページ: 289-300

    • DOI

      DOI: 10.1007/s00441-019-03037-3

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] メディカルイラストレーションにおける2つの基本的な描画技法2019

    • 著者名/発表者名
      加藤公太; 鈴木未来; 川村そら; 坂井建雄
    • 雑誌名

      日本メディカルイラストレーション学会雑誌

      巻: 2 ページ: 10-24

  • [雑誌論文] On the Human Body: Research, Literacy and Creativity2019

    • 著者名/発表者名
      SAKAI TATSUO
    • 雑誌名

      Juntendo Medical Journal

      巻: 65 ページ: 344~350

    • DOI

      https://doi.org/10.14789/jmj.2019.65.JMJ19-R09

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 脳の血管系とリンパ系2019

    • 著者名/発表者名
      坂井建雄
    • 雑誌名

      Clinical Neurology

      巻: 37 ページ: 20-22

  • [雑誌論文] 尿細管・間質の構造と機能2019

    • 著者名/発表者名
      坂井建雄
    • 雑誌名

      腎と透析

      巻: 87 ページ: 159-164

  • [雑誌論文] 用語のあり方について2019

    • 著者名/発表者名
      坂井建雄
    • 雑誌名

      遺伝子医学

      巻: 9 ページ: 17-24

  • [雑誌論文] 平成の時代に医学・医療はどのように変貌したか2019

    • 著者名/発表者名
      坂井建雄
    • 雑誌名

      病院設備

      巻: 61 ページ: 12-15

  • [学会発表] 美と言葉Art and Literacy2019

    • 著者名/発表者名
      坂井建雄
    • 学会等名
      日本美術解剖学会・大会
    • 招待講演
  • [学会発表] 現代の医学・医療と医史学―日本医学会公開シンポジウム「遺伝学用語のあり方について」から2019

    • 著者名/発表者名
      坂井建雄
    • 学会等名
      日本医史学会月例会
    • 招待講演
  • [学会発表] 人体を探る、語る、創める2019

    • 著者名/発表者名
      坂井建雄
    • 学会等名
      第347回順天堂医学会学術集会
    • 招待講演
  • [学会発表] 医史学が解き明かしたこと、物語ること2019

    • 著者名/発表者名
      坂井建雄
    • 学会等名
      第120回日本医史学会総会
    • 招待講演
  • [学会発表] 統計から見る献体と解剖の歴史2019

    • 著者名/発表者名
      坂井建雄
    • 学会等名
      篤志解剖全国連合会実務担当者研修会
    • 招待講演
  • [学会発表] 千葉と医学・医療の近現代史―課題・展望・期待―2019

    • 著者名/発表者名
      坂井建雄
    • 学会等名
      千葉県立医療保健大学10周年事業記念講演会
    • 招待講演
  • [学会発表] 回旋腱板筋の起始腱・停止腱の形態学的特徴2019

    • 著者名/発表者名
      森三郎; 加藤公太; 市村浩一郎; 坂井建雄
    • 学会等名
      第124回日本解剖学会総会
  • [学会発表] 烏口腕筋と上腕二頭筋の筋配列2019

    • 著者名/発表者名
      小見拓; 加藤公太; 坂井建雄
    • 学会等名
      第124回日本解剖学会総会
  • [学会発表] 単離筋標本を用いたヒラメ筋の構築についての研究―前面から見たヒラメ筋内部の筋構造―2019

    • 著者名/発表者名
      木村直明; 加藤公太; 市村浩一郎; 坂井建雄
    • 学会等名
      第124回日本解剖学会総会
  • [学会発表] 単離筋標本を用いた上腕三頭筋の形態─特に停止腱に着目して─2019

    • 著者名/発表者名
      森島遥平; 加藤公太; 市村浩一郎; 坂井建雄
    • 学会等名
      第124回日本解剖学会総会
  • [学会発表] 大殿筋の筋構築的解析2019

    • 著者名/発表者名
      姉帯飛高; 加藤公太; 市村浩一郎; 坂井建雄
    • 学会等名
      第124回日本解剖学会総会
  • [図書] プロメテウス解剖学 コア アトラス 第3版2019

    • 著者名/発表者名
      坂井 建雄
    • 総ページ数
      757
    • 出版者
      医学書院
    • ISBN
      978-4260035354
  • [図書] 『系統看護学講座』準拠 解剖生理学ワークブック2019

    • 著者名/発表者名
      坂井 建雄
    • 総ページ数
      144
    • 出版者
      医学書院
    • ISBN
      978-4260038249
  • [図書] プロメテウス解剖学アトラス 頭頸部/神経解剖 第3版2019

    • 著者名/発表者名
      坂井 建雄
    • 総ページ数
      589
    • 出版者
      医学書院
    • ISBN
      978-4260036436
  • [図書] 医学教育の歴史2019

    • 著者名/発表者名
      坂井 建雄
    • 総ページ数
      600
    • 出版者
      法政大学出版局
    • ISBN
      978-4588371271
  • [図書] プロメテウス解剖学アトラス コンパクト版 第2版2019

    • 著者名/発表者名
      坂井 建雄
    • 総ページ数
      1024
    • 出版者
      医学書院
    • ISBN
      978-4260036986
  • [図書] 図説 医学の歴史2019

    • 著者名/発表者名
      坂井 建雄
    • 総ページ数
      648
    • 出版者
      医学書院
    • ISBN
      978-4260034364
  • [備考] 順天堂大学大学院 医学研究科 解剖学・生体構造科学

    • URL

      https://jun-anatomy.cambria.ac/

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公開日: 2021-01-27  

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