研究実績の概要 |
申請者はガレノスの解剖学文書のうち、各論的な文書(骨、神経、血管、筋)をKuhn版ガレノス全集(1821-33)のテキストから日本語訳をしていた。新たに最新のギリシャ語原典版(Garofalo and Debru, 2005)を入手し、テキストの英語訳を一通り完成した。 さらにガレノスの他の解剖学文書の日本語訳が進行中であり、本研究の主要なテーマであるガレノスの解剖学の理解を助けている。共同研究による『身体諸部分の用途について』全17巻のギリシャ語原典については、原書第4~7巻の翻訳を完了し、2022年10月に京都大学学術出版会から刊行した。共同研究による『解剖手技』全15巻のギリシャ語とアラビア語原典からの翻訳も進行中で、原書第1・2巻の翻訳を完了している。これら解剖学文書の解読から、ガレノスの各論的な文書についての解読・同定の理解が深まり、英語訳の改訂を進めている。ガレノスによる筋の解剖について、並行する『解剖手技』の記述と対応させながら、記述されている筋の種類の同定を進めている。ガレノスによる筋の解剖について、並行する『解剖手技』の記述と対応させながら、記述されている筋の種類の同定を進めている。 ヴェサリウス『ファブリカ』(1543)について、ガレノスの解剖学の引用状況と記述内容の検証を行った。また『ファブリカ解剖図集』を岩波文庫から刊行予定で,原稿を完成して入稿している。 さらにガレノスとヴェサリウスの筋の知見を、現在に至る歴史的な解剖学文書と比較検討して、筋の解剖学の歴史的な発展過程を調査している。ボーアンの『解剖学劇場』(1605)が筋に固有の名称を与え、筋の解剖学のモノグラフとしては、ブラウンの『新解剖学』(1697)、アルビヌスによる『人体骨格筋肉図』(1747)、カウパーの『改新筋肉解剖』(1694、1724)がある。
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