進化心理学が採用する人間本性の生得論(例えば「モジュール集合体仮説: MMH」)は、社会的な制度改革や懲罰的な抑止策によって人間の非倫理的・反社会的な行動をどこまで後天的に(環境によって)矯正しうるかという問題、さらには犯罪行為の帰責問題などとも関係してくる、極めて大きな社会的含意をともなう立場である。1990年代以降現代にいたるまで彼らがほぼ無修正に採用しているこうした立場が、21 世紀のあらたな生命科学や脳神経科学の展開の中でどこまで維持されうるものであるのかを実証的に検討するというのが、この研究の背景にある一つの社会的動機であった。
|