この研究は、植民地における近現代建築史においてこれまでに重視されてこなかった生産・技術史的視点をもち、鉄筋コンクリートという近代における新しい技術を用いて建築作品をつくった建設会社に焦点を当てている。本研究においてはブロサール・モパン社が具体的に英領シンガポールでどのような鉄筋コンクリート技術を展開させたかをアーカイブズの資料から明らかにしたことは、地域ごとの鉄筋コンクリート技術伝播の状況の違いを具体的に理解することが可能となる点において学術的に重要である。本研究による技術的な視点は今後のアジアにおける鉄筋コンクリート建造物の遺産評価を充実させることに貢献するものである。
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