研究課題/領域番号 |
19K00288
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
平田 光司 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 特別教授 (90173236)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 高エネルギー加速器 / トランスサイエンス / 専門家集団 / 先端技術の設計 / オーラルヒストリー / 機種変更 / 原子核研究将来研究 / SSC |
研究実績の概要 |
米国における超伝導超大型衝突型加速器(SSC)は1986年の概念設計では補正用コイルという新アイデアを採用することで小さい磁石でも十分な性能が出せるとして予算を抑えた。計画が承認されたあとで加速器専門家のグループが大きく入れ替わり、再設計を行い、補正用コイルの使用を中止し大きな(より精度が高い)磁石を用いることにした(1990年)。これらによって建設費用が60%も増大し、1993年に議会によって建設が中止される遠因となった。 日本学術会議の勧告に基づき原子核特別委員会(核特委)が中心となって推進していた、原子核研究将来計画の中心であった素粒子研究所の大強度陽子加速器(HRAG)の計画は、デザインの妥当性に当初から不信感を持たれていた面もあるが、研究者に広く支持されていた。しかし「民主的」な合意のないまま、1965年に強度の少ない通常型に変更された。その結果として素粒子研究所を準備する組織に大きな改変が起きた。 SSCと素粒子研究所における機種変更を、技術的、歴史的な側面だけでなく、専門家集団の社会的構造変化の観点から分析する。先端的な大型装置のデザインはトランスサイエンスの典型例であり、不定性を避けられない。デザインと建設には専門家集団の多様な価値観が反映する。専門家集団の経路依存的な多様性に着目することで、不定性がある中での意思決定のありかたを探る。 2019年度には記録の収集を行ない、またSSC建設予定地であったテキサス州Waxahacieを訪問し、現地の様子を視察、地元紙の記録を集めた。これらの成果の上に2020年度には関係者へのインタビューや記録の閲覧を予定していたが新型コロナによって面会・旅行が実質上禁止されたために、すでに入手していた資料の精読および部分的成果の学会発表のみを行った。ただし、資料の精読の中からSSCの歴史に関する新しいアイデアを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
昨年度の末(2020年2月)以降、新型コロナウイルスによる実質上の旅行禁止、研究所閉鎖の影響によって予定していた資料収集、インタビューなどは延期せざるを得なくなった。
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今後の研究の推進方策 |
旅行・面談が可能になれば、当初から予定していたオーラルヒストリー調査(国内、米国)および史料調査(米国)を行う。SSCで当初計画されていた補正コイルは、のちにドイツのHERA加速器で使われ、成功していることから、当初計画にはなかったHERAのデザイン、建設、運転についても調査することを計画している。
なお、SSCの歴史について得た文献資料から得た仮説を面接調査等によって実証することも計画する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの影響によって資料調査、インタビュー調査が実質上不可能となった。
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