研究課題/領域番号 |
19K00288
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
平田 光司 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, その他部局等, ダイヤモンドフェロー (90173236)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 高エネルギー加速器 / 専門家集団 / 原子核研究将来計画 / 日本学術会議原子核特別委員会 / トランスサイエンス / SSC計画 |
研究実績の概要 |
米国の高エネルギー物理学の中心的な次期計画であった超伝導超大型衝突型加速器(SSC)と日本学術会議の勧告に基づいて原子核特別委員会(核特委)が中心となって推進していた大強度加速器(HRAG)の計画は、どちらも計画承認後に加速器グループが改組され、再設計が行われ、デザインが大きく変更された。これらを、技術的な側面だけでなく、専門家集団の社会的構造の観点から分析することが本研究の目的である。 2019年度には記録の収集を行ない、またSSC建設予定地であったテキサス州Waxahacieを訪問し、現地の様子を視察、地元紙の記録を集めた。しかし2020-21年度に予定していた関係者へのインタビューや記録の閲覧が新型コロナ感染症の影響によって実施不能となったために、すでに入手していた資料の分析に基づいて部分的な成果として学会発表のみを行った。この中でSSC計画を進めていた米国エネルギー省(DOE)が同時期にヒトゲノム計画も推進していたことに着目し、学会発表を行った。 2022年度にはHRAGから通常型の加速器へと方針転換した核特委における検討状況を一次資料に基づいてくわしく調査した結果、通説とされているいくつかの点に誤りがあることを発見し、論文執筆を開始した。 2023年度には上記論文を発表したほか、HRAG計画に先立つ東京大学原子核研究所の電子シンクロトロンの建設、運用がHRAG計画に及ぼした影響についての調査を始め、高エネルギー研究者集団の形成とHRAG計画の関係について、これまでよりも詳細に検討する方向性を目指すことになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度に方針を一部修正し、原子核研究将来計画における機種変更についての一次資料の検討に集中した結果、「合意形成を重視する日本の研究者集団の悪弊により機種変更が遅れ、将来計画の実現に時間がかかった」、「機種変更は文部省や大蔵省に研究者集団への不信感をもたらした」などの「通説」についての反証を見出すことができ、本研究の成果として論文執筆に進むことができた。これにより新型コロナウイルス禍による損害をかなり回復できたと感じている。SSCに関しては一次資料の入手の面でコロナ禍の影響を回復できていないので、2024年度に検討を試みる。その場合、上記DOE内部におけるSSCとヒトゲノム計画の優先順位について調査することが有益ではないかと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
上記、SSCに関するDOEの政策に関する調査を行う。また将来計画に関わる研究者集団の持っていたイデオロギー的側面に関する調査を行い、大型装置科学を技術面で担う研究者と、政策面で推進する研究者の方針の協力・対立状況に焦点をあてて調査し、機種変更の歴史的意味の解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により2020年度、2021年度にはほぼ研究が行えず、2022年度にも支障があったため。
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