研究課題/領域番号 |
19K00290
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
馬場 美佳 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (90405548)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 新聞小説 / 明治文学 / 森田思軒 / 郵便報知新聞 / 原抱一庵 / 翻訳小説 |
研究実績の概要 |
交付申請書に記載した項目ごとに、2年めの研究実績の概要を報告する。昨年度既に報告した通り、コロナウィルス蔓延の状況下、(3)を主軸に据えることで研究を進めた。 (1)森田思軒訳および黒岩涙香訳の作品についての原著の解明―本年度においては、笠岡市が管理する『郵便報知新聞』の編集者だった時期の森田思軒関連書簡について、コロナ状況以前に調査・撮影したものの分析・考察を行なった。 また、思軒の調査の過程で、同時期に『郵便報知新聞』で翻訳と新聞編集に関わっていた原抱一庵にもやはり複数の原著不明作品がありそれらを明らかにする必要が生じたため、調査を行った。結果、「幽棲」はテオフィル・ゴーティエの「キャプテン・フラカス」、「明月」はヴィクトル・ユゴーの「レ・ミゼラブル」を原著とすること等を明らかにした。 (2)国際的視野に立った森田思軒訳および黒岩涙香訳の新聞小説/翻訳小説の位置づけ―これまで「新聞小説」という大枠で議論されてきたものについて、特に思軒を中心とする『郵便報知新聞』における翻訳小説の連載は、「通信小説」という当時の通信による国内外の情報(記事や物語)の流通のあり方から新たに論じるべきものであることを明確にした。本年度は海外調査が不可能であったが、最終年度の6月に開催の国際学会(The Asian Conference on Cultural Studies)にエントリーし、そこで国外の研究者からの知見を得ることとした。 (3)思軒以降の文学者と新聞編集の関係について考察するための視座の獲得―『国会』の新聞記事と幸田露伴との関連について初年度に引き続き調査を行ない、成果発表へ結びつける目処が立ったところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
国内外における調査が、コロナウィルス蔓延のため中止となり、調査の主軸を変更せざるを得ない状況だったため。できるだけ研究を推進するよう努めたが、各公共施設の管理する資料を閲覧する必要があるため、なかなか難しい状態が続いている。 また本年度も笠岡市主催・森田思軒顕彰会における講演で、これまでの調査の概要を報告し、地域文化振興に還元する予定であったが、1年延期となった。
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今後の研究の推進方策 |
2年めまでの国内調査を踏まえ、引き続き調査を行いつつ成果報告することを予定していたが、今後も状況を見つつ判断していく必要があると考えている。コロナウィルスが落ち着き次第、国内調査を再開する予定でいるが、調査のメインを概要に記した(1)および(3)にすることで、少しでも課題解決に近づけたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス蔓延のため海外調査および国内調査ができず、旅費の使用がなかったため。調査が再開できた場合は、次年度の旅費に充当する。それが困難な場合は、遠隔での資料収集が可能な範囲において研究を遂行するための費用に当てたい。
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