1945年10月に大阪で創刊された夕刊紙『国際新聞』(1945~1959)は,中華人民共和国に好意的な華僑メディアとして,冷戦構造に由来する分断線をまたぐ報道を行った点に特徴を有する。『国際新聞』は,占領期からその後にかけて,主流のメディアとは異なる視点を当時の読者に提供した。また,大阪における革新系文化運動に関する記事を積極的に掲載したが,在日華僑だけでなく,在日コリアン(たとえばのちに在日コリアン文学を代表する詩人となる金時鐘など)にも日本社会にむけて発言する機会を与えた。このような意味では,『国際新聞』は,戦後在日コリアン文学の忘れられた起源の1つと位置づけることもできる。
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