研究課題/領域番号 |
19K00296
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
要木 純一 島根大学, 学術研究院人文社会科学系, 教授 (00230631)
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研究分担者 |
板垣 貴志 島根大学, 学術研究院人文社会科学系, 准教授 (80588385)
竹永 三男 島根大学, 法文学部, 客員研究員 (90144683)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 若槻礼次郎 / 渡部寛一郎 / 山陰 / 政党政治 / 漢詩文 |
研究実績の概要 |
今年度も、渡部寛一郎文書の整理、読解を通じて、政治家若槻礼次郎が、漢詩文のやりとりを通じて、山陰地方の憲政会(民政党)後援者と連携して、いかに政党政治の基礎を築いたか、を明らかにした。毎月1回、本年3月まで、渡部寛一郎文書研究会を開き、日記(くずし字)の解読、日記に記された事件の背景等について、研究者同士で、討論し、共通の理解に達することが出来た。遠方よりの研究分担者、協力者の発表を中心とした特別例会は、もともと年2回、秋と春に行う予定であったが、引き続き新コロナの猖獗によって、開催は見送った。また、島根県石見地方の、政党政治、 地方政治のあり方と主に漢詩を中心として文芸との関りについて、科研メンバー同士の理解を深めた。この秋の特別例会は、地元の研究者との交流に努め、新たな知見や、口承でのみ知られていた歴史事実を教えていただいた。今後地域研究を進めるに際し、多大な利益を得ることができた。渡部寛一郎文書以外にも、出雲市の板倉家文書等、希少な諸資料を撮影、整理することができた。その成果の一部が、『山陰研究』12号で公開した、「翻刻 渡部寛一郎日記3」である。学生アルバイトに希少な監視資料の資料整理・データ作成をさせるなどして、地域研究に興味を持たせ、ひいては彼ら自らの研究スキルを磨かせることが当初の計画予定であったが、これまた、コロナ禍によって、大学閉鎖、2月に細々と再開するにとどまったのは残念である。 なお、特筆すべきこととして、地方史研究者森安章氏の、明治期の村における上下階級の対立に関する三十年前の講演を、再調査した上でまとめた論文を、デジタル化して、「山陰研究」に公表できたことがある。この重要な業績を後世に残すことができたことは一大快事である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
月ごとの例会により、渡部寛一郎文書を当初の予定よりも多めに解読した。その一部(渡部寛一郎日記)の翻刻は、 『山陰研究』誌で公開し、詳細な年表や解説を付して、日本漢文学、山陰地域、政党政治等の研究者に、重要な新資料を提供することができた。今年は新コロナ対応により、特別例会が開けなかったが、Zoom等により、遠隔の科研メンバーや外部の有識者と交流ができ、様々な知見を得ることができた。特に、明治出雲初期の旅行案内書兼漢詩・和歌・俳諧全訳完成とその出版は、わかりやすい形で、山陰地方の文化遺産を市民に知らせることができたと思う。学生アルバイトを用いて、データベースを作らせる等の計画は、コロナにより一時中断したが、2021年の2月より再開し、山陰を中心とした漢詩集『剪淞集』の翻刻の半分を超えることができた。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ対応により、例会は開けなくなった。その代わりに、メール等の相談により、月一回から二回程度、渡部寛一郎文書の翻刻を進めていく。また、Zoom等により、遠方の研究協力者と、資料読み合わせ、意見交換会を開きたい。IT関係の技術は、これから勉強しなければならないが、そのための費用を、今年も見積もるつもりである。今年度から、新メンバー(研究協力者)として、島根県の政治運動や地域活動の研究者である、森安章氏を迎え、例会での発表、討議さらには『山陰研究』投稿を通じて、本研究の政党政治方面への提言を頂く予定である。 国会図書館等へ直接訪問することは、今年度中は無理なのではないか。代わりに資料、古書を多く購入して、情報を集積することになると思う。渡部寛一郎日記の翻刻に向けて、解読を進める。相変わらず、原稿まとめや校正に手間取るので、秋口までに、完成原稿に近い形にして、『山陰研究』誌上等に発表したい。また、年表、登場人物の簡単な履歴、社会背景等を、注釈の形で、研究協力者大國氏により、別個同誌上に発表していただく予定である。若槻礼次郎や山陰漢詩人の漢詩集を、学生アルバイト等を用いて、データベース化し、人名索引等を付した、翻刻をまずは稿本の形でまとめたい。 科研最終年の今年は、できればブックレットの形で、山陰の漢詩と若槻礼次郎ら政治家との関係を論じた報告書を作成する。そのための費用を計上することにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 3月に遠方からの参加者を見込んだ特別例会を開き、そのための予算を確保していたが、コロナ対策により、特別例会が中止になった。代わりに地元研究者の集まる通常の例会を開いたが、出張費・宿泊費等は不要であった。資料・書籍代等も、今年は本務多忙につき、予定通りの購入が出来なかった。 (使用計画)さしあたっては、例会が開けない。年度後半に、自粛要請が緩くなったら、状況を見て再開を考える。その代わりに、ウェブ会議を開く予定で、そのために、高性能のコンピュータを購入しなくてはならない。また、直接現地に行って、資料を収集することも、目下の情勢では難しくなったので、資料取り寄せ、古書購入等によって、欠を補いたい。購入予定の書籍等を早急に購入する。
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