研究課題/領域番号 |
19K00307
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
榊原 理智 早稲田大学, 国際学術院, 教授 (00313825)
|
研究分担者 |
辛島 デイヴイツド 早稲田大学, 国際学術院, 准教授 (40736005)
塩野 加織 早稲田大学, 文学学術院, 准教授(任期付) (80647280)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 日本近現代文学 / 英語訳 / 冷戦 / キャノン |
研究実績の概要 |
本研究は、日本近現代文学が英語翻訳を通して世界の主要な文学(キャノン)になっていく過程を、英語翻訳の生産・出版・流通の側面から解明することを目的とし、1) 戦後占領期および初期冷戦期における英語翻訳のキャノン形成 2) 村上春樹をはじめとする現代作家の英語翻訳によるキャノン変容という二つの研究領域を視野に入れていた。1)の領域はコロナの影響によって当初予定していた米国での資料調査等ができなくなったため、資料調査のための準備作業に専念せざるを得なかった。研究代表者の榊原は本研究の1) における重要な作家である谷崎潤一郎に関するワークショップ(2021年3月20日にオンライン開催)において、海外を含めた50人近い参加者と意見交換を行った。2)の領域における重要な成果としては、研究分担者辛島ディビッドの単行本『文芸ピープル 「好き」を仕事にする人々』(2021年 講談社)の出版が挙げられる。英語圏において日本の現代女性作家の翻訳が次々に出版され、新しい日本現代文学のキャノン化が行われていることを論じており、学術書ではないが本研究の基盤となる問題意識を提示しており、次年度以降の本研究の方向性を明確にするものである。また、これらはエッセイの形で文芸雑誌『群像』にも掲載されている(「英語圏で読まれる現代日本文学」 『群像』講談社 2020年6月号及び「新しい「日本文学」を編む海外編集者たち」 2020年 12月号)。また辛島は著者として海外の二つのオンライン雑誌からインタビューを受け、それを発表しているほか、英国イーストアングリア大学、オックスフォード大学主催のオンラインでのワークショップ(それぞれ2021年2月17日、2月22日)に参加して講演を行なっている。榊原は2)の領域で、翻訳も多く出ている多和田葉子とリービ英雄についての小文を寄稿し2021年刊行予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
冷戦期前後の基礎資料調査に関しては、今般の感染症対策による海外渡航の禁止措置および米国側の入国規制により、2020年度内に予定していた米国への渡航を伴う調査出張は全面的に中止となった。また、日本国内においても、資料所蔵機関各所の利用閲覧制限に伴い調査が限定的となったため、次年度以降も継続して進めていく必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
2020年度に予定していた米国諸機関での冷戦期前後の基礎資料調査を、継続して行う予定である。ただ、2021年も渡航状況が依然不透明であることから、国内における調査を継続して進めるとともに研究会を立ち上げ開催を目指す。現在までに構築したネットワークを最大限に生かし、オンライン・サービス等も使用しながら実施を検討したい。2) の現代文学の英語圏でのキャノン化については、10月に開館予定の国際文学館(村上春樹ライブラリー)とコラボをなんらかの形で模索する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に予定していた米国での冷戦期前後の基礎資料調査が、今般の感染症対策による海外渡航の禁止措置および米国側の入国規制により全面的に中止となったため、21年度に延期することとした。
|