研究課題/領域番号 |
19K00309
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
増田 周子 関西大学, 文学部, 教授 (30294664)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 戦犯管理所 / 撫順 / 北京 / 火野葦平 / 戦争 / 東アジア / フィリピン |
研究実績の概要 |
火野葦平の研究は、少しずつではあるが進めることができた。まず、2021年5月に開催された東アジア文化交渉学会では、パネル発表を行い、火野の北京視察の様相について発表した。また、その発表を関西大学『文学論集』に論考としてまとめることができた。また、2021年10月には、中国山東大学で開催された山東フォーラムで、撫順の戦犯管理所を火野が訪問した記録について報告した。加えて、2022年3月に、東西学術研究所日本言語文化研究班と本科研費とで国際シンポジウム「戦争と文学の交渉―古代から近現代へ―」を共同開催した。戦争は惨禍惨劇しかもたらさないが、古代から近現代まで形態は変われど生じ、しかも戦後75年以上を経た現在でも、世界各地で起こっている。また戦争を表象した文学は無限にある。そこで、古代から近現代の戦争を表象した文学や戦時中の検閲などを、グローバルな視点で研究し、戦争と文学の接点を見出す。さらに、改めて、戦争を文学から概観し、現代の諸問題への解決につなげていく、とういうのが企画趣旨である。 さて、開催は、1日だけであったが、基調講演2名、発表者9名の合計11名の報告者であった。なお、当日は予稿集58ページ、発表資料集12ページを作成し、国内外に発信することができた。外国人の発表者は3名で、外部発表者として、中国中山大学の鄒双双准教授をお迎えし、石川達三「生きている兵隊」の翻訳の諸相について報告を受けた。コロナ禍でのzoom開催ではあったが、ウクライナとロシアとの戦争が勃発した頃でタイムリーなシンポジウムだったこともあり、多くの方々に関心を寄せられ、参加者は約60名と盛況で、活発な質疑応答が繰り広げられた。古代から近現代の戦争や検閲の様相を振り返り、戦争と文学の交渉が浮き彫りにされ、総合して本シンポジウムで学術的な新しい知見を提示することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍であっても、国際シンポジウムを開催したり、国際学会に参加して発表するなど着実に研究を進めることができているから。
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今後の研究の推進方策 |
火野葦平の1955年の中国視察について、数年前に『中国旅日記』という自筆資料の翻刻を行ったが、今年度は、その続きの『新中国旅日記Ⅱ』の翻刻を進めて、発表する。また、2022年3月に開催した国際シンポジウム「戦争と文学の交渉―古代から近現代へ―」の成果報告書を関西大学出版部から刊行する計画を立てている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の中、予定していた海外出張ができなかったため、次年度使用額が生じることになった。2022年度は、まだ、海外出張ができない可能性があるため、国立国会図書館、日本近代文学館、北九州市立文学館などへの国内出張を行い、資料収集をし、研究をすすめていく予定である。
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