コロナ禍の影響で、長期にわたり実地調査をすることができなかったが、本年度は9月に宝珠院調査を、そして2月に大分県立図書館調査を実施した。 宝珠院では、前回調査の際に出現した新たな函に収められている典籍類の書誌記録を取り、また、書誌記録済みであるが、未撮影の典籍類の撮影をした。大分県立図書館では、宝珠院所蔵資料と関連する典籍4点(6冊)の書誌調査・撮影を行い、また、調査中に判明した当該資料と大友能直(平安時代末期~鎌倉時代初期)との関係を確認するため、関連寺社の実地調査を行った。 本研究課題は、2019~2021年度の3箇年の予定であったが、コロナ禍の影響で2020年度から実地調査を行うことができず、大幅に予定を変更し、2度の期間延長をした。実地調査ができなかった時期は、書誌学や近代仏教についての先行研究を把握することに時間を割くとともに、2つの研究集会とシンポジウムを企画・開催した。 日本宗教文献調査学合同研究集会は、複数の科研費の共同開催である。諸分野の研究者が文献資料調査をする際、多くの場合、独学で習得した書誌学・文献学の知識に基づいて行っている現状に鑑み、どのような観点から書誌情報を記録しているのかという問題に特化して情報提供をし、議論することを目的としたものであった。仏教文学会シンポジウム「戦時下の仏教」は、近代仏教史で特に注目されている「戦争」に注目し、仏教界が近代の対外戦争(特に昭和戦時期)の影響をどのように受けたのかという問題を議論し、寺院資料調査との協同の道筋を探った。 5年にわたり、実地調査を中心としつつ、書誌学・近代仏教史の研究史の把握と関連シンポの開催という複数の方角から、研究課題を進めることができた。
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