研究課題/領域番号 |
19K00311
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研究機関 | 奈良大学 |
研究代表者 |
木田 隆文 奈良大学, 文学部, 教授 (80440882)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 上海 / 中国 / 池田克己 / 林広吉 / 戦後詩 / 戦後文学 / 戦後文化 / 越境 |
研究実績の概要 |
本研究は、戦時下の上海および中支各都市で活動した日本人文学者・文化団体の人的ネットワークが、戦後日本の文芸文化の創生と展開に与えた影響を検討するものである。特に研究初年度にあたる本年度は、研究基盤の確立と次年度以降の研究を具体的に進展させるために、研究のキーパーソンとなる(1)池田克己・林広吉関係の文献情報の探索・整理と、(2)それに基づく人的・文化的ネットワークの確認、に重点を置いた。 具体的な研究活動としては、池田克己が戦後に興した詩サークル「日本未来派」の機関誌および関連文献から大陸関連の人脈を抽出、彼らの活動の足跡を追った。また林広吉についても、彼が戦前に関与した中日文化協会の関係者を関連文献からリスト化し、その戦後の足跡を整理した。 この作業によって得た現時点での知見のうち、池田克己の大陸人脈と戦後詩壇の形成をめぐる問題については、「戦後日本における戦時上海文壇の継承と断絶―上海文学研究会から日本未来派へ―」(日本近代文学会・昭和文学会・日本社会文学会合同国際研究集会、2019年11月24日、於・二松学舎大学)において研究報告を行った。 また本年度収集した文献資料については、展観「越境する女性作家たち―内地から外地、そして戦前から戦後へ―」(2020年1月~5月 於・奈良大学図書館)において公開を行った。なお本展観は基盤(C)「植民地朝鮮におけるセクシュアリティ言説研究」(研究代表・光石亜由美)と共同で開催し、かつ戦前から戦後にかけて外地・内地を越境した女性作家の活動を一般向けに紹介することで、他科研との研究交流と一般への研究成果公開を積極的に図ることを意図した。さらに高綱博文・木田隆文・堀井弘一郎編『上海の戦後―人びとの模索・越境・記憶』(2019年7月、勉誠出版)を他科研および隣接領域の研究者とともに刊行し、当該分野の研究的意義を学会内に示すことも行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は夏・春の2回の海外文献調査および数次にわたる国内での文献調査を予定していたが、新型コロナウイルスの影響により、春季の海外調査および国内調査がほとんど中止となった。そのため、文献の収集・整理と、それに基づく調査が当初の予定より遅延している。
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今後の研究の推進方策 |
コロナウイルスの影響が終息するまでの間、資料収集に関しては古書市場等で購入可能な文献の探索を進めることで、資料的な不足を補うことを模索している。また現時点ですでに手元にある文献を別視点で検討することで、新たな研究的可能性を見出すことに努めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が出た理由は、新型コロナウイルスの影響により中国および国内での調査が軒並み中止となり、旅費および文献収集費用の執行ができなかったことによる。 国内外での調査活動が再開可能となった際には、次年度使用額を積極的に調査旅費使用に充てる予定である。
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