本研究の目的は、三国伝来の日本仏教の起源と歴史に準じつつ独自性を備えた修験の起源と歴史が整備されていく過程を解明することである。コロナ禍により2年間の延長を余儀なくされたが、本年度末までに所期の目標に近い成果を得た。 5つの小プロジェクトのうち、令和2年度までに、2.『大峯縁起』ほか縁起の受容例一覧作成、5.大峯信仰偽史の研究について、令和3年度までに、3.大峯=両界曼荼羅説の発生と受容の研究について一定の成果をあげたことを既に報告した。残る二つプロジェクトのうち、1.『大菩提山等縁起』の基礎研究については、原本調査が困難となったため、それに代わって、研究代表者を中心に、園城寺光浄院蔵の新出資料(修験道文献を含む)200点以上の調査を始め、3/4の調査を終えたが、データの公開には至っていない。4.平安時代後期の寺社縁起作文における幼学書利用の研究については、研究分担者が最新の成果を雑誌論文で発表した。加えて、計画5について、考古学者の発掘調査の成果を踏まえた研究成果をまとめて成稿したが、所収予定の学術図書の刊行予定が大幅に遅延している。 本研究の国際的展開については、研究代表者が米国の大学を拠点とするオンラインワークショップで、欧米・日本の双方に向けて修験道研究の現状と可能性について報告した。加えて学際研究として、メディアに焦点を当てた、欧州中世の修道院との比較研究にも参加し、その論集に修験の縁起の創出と受容について発表した。
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