研究課題/領域番号 |
19K00314
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研究機関 | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
研究代表者 |
井上 泰至 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 人文社会科学群, 教授 (90545790)
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研究分担者 |
山本 聡美 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (00366999)
合山 林太郎 慶應義塾大学, 文学部(三田), 准教授 (00551946)
出口 智之 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (10580821)
松澤 俊二 桃山学院大学, 社会学部, 准教授 (60582822)
木村 洋 上智大学, 文学部, 准教授 (70613173)
日置 貴之 白百合女子大学, 文学部, 准教授 (70733327)
多田 蔵人 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 准教授 (70757608)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 新派旧派 / 正岡子規 / 秋声会 / 日本画 / 写生 / 源実朝 |
研究実績の概要 |
3回の研究会を行った。1回目は、6月29日早稲田大学戸山キャンパスで。出口の近代小説と絵画論、および井上の新派俳句と絵画論の2本の研究発表。2回目は、9月29日上智大学で。日置の近代歌舞伎論と、研究スタッフ以外から伴野文亮(東北大学)の旧派俳句と思想の2本の研究発表。3回目は、2月9日東京大学駒場キャンパスで。研究スタッフ以外から、田部知季(日本学術振興会研究員)の新派俳句の定義の研究発表と、古田亮(東京藝術大学)への井上のインタビュー(明治文学の新旧と近代絵画の新旧)。また、10月26日、俳文学会全国大会で、井上が新派俳句の中の保守派である秋声会と日本画および江戸研究について発表を行った。 研究者代表者の井上の専門が俳句であるため、俳句についての研究が中心となり、新派と旧派の党派性の実態とその区分の意味を、俳句のみならず、学問・思想・メディア・美術の観点から問い直し、漢詩文・短歌・演劇・小説との関連性についても、いくつかの論点が浮かび上がってきた。 これらの成果を受けて、10月から井上は、ミネルヴァ書房の日本評伝選のシリーズで『正岡子規』を執筆を終えた。また、京都府立歴彩館所蔵の伊藤松宇旧蔵の子規関係資料を複写し、翻刻中である。子規の存在は、漢詩文・短歌・演劇・小説との関連性もあり、ここを突破口に研究全体の引っ張っていっている状況である。日置・松澤・多田は、『源実朝―虚実を越えて』(勉誠出版)において、短歌・演劇・小説の分野からそれぞれ、この「写生」歌人の先駆けと目された実朝の評価に迫った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究会を3回行うことで、本科研に共通する問題意識を明確にし、共有することができた。特に古田亮氏を迎えてのインタビューにおいて、新旧の区別は新派側から出た党派性の強いくくりであって、10年単位でみれば、新旧は交錯していく視点がもたらされたことは、大変貴重であった。 俳句の分野でも、明治28・29年の日清戦争の時期、子規と紅葉を核に、新派旧派の分類がなされて、メディアで喧伝されていくが、明治37・38年の日露戦争の時期には、河東碧梧桐を除いて、新派と旧派は接近を見せている。むしろ、「写生」をめぐる新派俳人の理解の差異こそが、絵画と同様、重要な視点であることを確認できた。 リアリズムは、俳句に限らず、文学の改良のポイントであり、この問題意識を共有できたことで、次年度以降の各分野の検討に入ることができるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
1年目で共有できた新派旧派の知見を軸に、各分野でこれを検討していくことになる。 演劇分野では、新派劇の生成について、神山彰氏を迎えて講演と日置氏からのインタビューを行う予定である。 また、木村氏から20~30年代の文学と思想について発表をしてもらう予定も立てている。 さらに和歌と詩の分野で成果を上げている青山英正氏の合評会や、井上の新著『正岡子規』の合評会も予定している。また、これに関連して秋声会や、俳句の紹介者野口米次郎の調査なども引き続いて行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
主に俳句分野で、有益な新資料が京都歴彩館で発見され、旅費が予定外に増えた。調査先の優先順位を再検討し、執行したい。
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