研究課題/領域番号 |
19K00317
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
兼岡 理恵 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 准教授 (70453735)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 風土記 / 翻訳 / カール・フローレンツ / 芳賀矢一 / 享受 |
研究実績の概要 |
本年度は、19世紀末~20世紀初における風土記享受・研究を二つの観点から調査した。一つは、ドイツ文献学を学び、近代的国文学研究の礎を築いたとされる芳賀矢一の風土記観・享受に関する調査・研究である。芳賀は、風土記を低評価する同時期の日本文学研究者に比し、ドイツの郷土研究への関心から、グリム童話のような民間説話・伝説を収載する書として、また当時隆盛してきた新体詩や芸術・演劇の題材となり得る書として、風土記の価値を認めていたことを明らかにした(「芳賀矢一と風土記―一九世紀末~二〇世紀初頭の文学研究をめぐる諸相―」『論集上代文学』第三九冊 笠間書院 2019年)。さらに芳賀の国文学研究に対する方法・思想を考察した(「文学史攷究法研究」百年ー芳賀矢一の足跡を辿ってー」『日本文学』 68(8) 2019年)。 もう一つは、芳賀とも交流があった、ドイツの日本学研究者カール・フローレンツの風土記研究である。具体的には、フローレンツの古代文学研究の概要、および彼の風土記観・享受を著述類から考察、論文化した(「十九世紀末における風土記享受-カール・フローレンツを中心に」『国語と国文学』第96巻第11号 2019年)。またフローレンツが行った風土記ドイツ語訳について、その翻訳・注釈方法について分析を行った(「『山城国風土記』逸文・伊奈利社条のドイツ語訳―カール・フローレンツ『日本の神話』」『朱』第63号 2020年)。 芳賀、フローレンツは、その文学観・研究方法について互いに影響を与え合っており、本研究では、それを風土記という切り口から明らかにしたといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画では、本年度は栗田寛の風土記研究を中心に行う予定だったが、2018年度の在外研究の折りにドイツ・ハンブルクで行った調査・研究の延長として、まずカール・フローレンツおよび芳賀矢一に関する調査を行うこととした。 一方、年度末に栗田寛関連資料や、風土記写本調査などのため国内出張を予定していたが、新型コロナウィルス感染拡大のため中止を余儀なくされた。さらに英語版風土記概説書の打ち合わせを、米・コロンビア大学のディビット・ルーリー氏と予定していたが、同じく新型コロナの影響により実現できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、古事記学会研究大会における研究発表(2020年6月)、EAJS国際学会への参加(於:ベルギー 2020年8月)を予定していたが、新型コロナウィルス感染拡大によりこれらの学会は延期となり、今年度末あるいは来年度以降の発表・参加の準備を行う。 また少なくとも今年度前半は、国内外の調査出張も困難だと予想されるため、これまでに収集した資料や、公開されているデータベース・オンラインから閲覧可能な資料等をもとにした調査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度後半に予定していた複数の国内出張が、新型コロナウィルス感染拡大により、すべてキャンセルとなったため、旅費が発生しなかった。 2020年度の学会参加・調査出張も中止・延期の可能性が高いため、国内外の書籍等の資料収集、資料整理に必要なPC関連機器、また遠隔会議・打ち合わせに備えて、外付けWebカメラ、マイクなどの購入を中心に行う。
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