研究課題/領域番号 |
19K00317
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
兼岡 理恵 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 教授 (70453735)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 風土記 / 注釈 / 受容 / 翻訳 |
研究実績の概要 |
今年度は、本研究のテーマ「日本/海外の風土記享受」に関して、以下の研究を行った。 まず日本の風土記享受では「出版」「注釈史」という視点から考察・研究を行った。「出版」では、刊行された風土記テキストの端緒である荒木田久老校訂『肥前国風土記』(寛政12年〔1800〕刊、同年『豊後国風土記』刊)について、久老周辺のネットワーク、写本流布から出版経緯を辿るとともに、久老の本居宣長に対する対抗意識も、その背景にあったことを明らかにした(古事記学会・風土記研究会合同大会 発表 2021年6月)。 また「注釈史」について、『出雲国風土記』意宇郡の郡名起源譚―いわゆる「国引き詞章」―の中世~明治における享受・注釈史について検討した。中世には、様々な寺社縁起に国引き詞章のモチーフが見られること、また近世には荷田春満、内山真龍ら国学者によって注釈が為されるようになり、さらに本居宣長が『玉勝間』等で同詞章を高く評価しており、それが明治期に出版された文学史にも引き継がれたこと等を明らかにした(古代文学会夏期セミナー 2021年 8月。『古代文学』66 2022年3月)。 一方、海外の風土記および日本研究については、初めて風土記ドイツ語訳を手がけた日本学者カール・フローレンツについて、考察を進めた。その一つが、フローレンツの弟子であるドイツ文学者・藤代禎輔が、フローレンツの要請により行った『独訳万葉集巻五鈔』について、その成立背景・内容を分析した論考である(「藤代禎輔『独訳万葉集第五巻鈔』―日本人による『万葉集』ドイツ語訳の先蹤―」『萬葉集研究』第41集 塙書房 2022年)。またフローレンツ退官後、ハンブルク大学日本学科教授となったヴィルヘルム・グンデルトについて、その日本研究について考察した(第23回国際日本学シンポジウム 2021年7月)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス感染状況により、日本各地の文庫・図書館における調査・出張が難しい状況が続いたため。また海外の研究協力者との打ち合わせを、定期的に行えなかったことにより、計画当初より進捗が遅れている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルス感染状況が徐々に落ち着いており、今年度は日本各地の学会や、図書館・文庫調査を行うことが可能となることが予想される。また海外の研究者とのオンラインミーティングを継続的に開催できるよう計画中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染拡大により、当初計上していた調査・学会出張費が未使用だったため。今年度は状況も落ち着き、出張も可能となると考えられる。
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