研究課題/領域番号 |
19K00321
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
山本 秀樹 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (60252409)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 江戸時代出版法 / 日本近世史 / 日本近世出版法 / 蔦屋 / 藩法 / 御触書集成 / 寛政改革 / 山東京伝 |
研究実績の概要 |
「江戸時代出版法の布達範囲 ―熊本藩史料・岡山藩史料・加賀藩史料を通して―」は、これまでまったく注意を向けられたことがなかったと言っていい、江戸時代の藩域における幕府出版法の存否についておそらく初めて考察したものである。(これまで江戸以外の幕府出版法については、拙著『江戸時代三都出版法大概』(岡山大学文学部、平成22年2月)が、幕府直轄都市江戸・京都・大阪における幕府出版法の圧倒的多数の異なりとごく少数の共通について明らかにしたくらいである。)幕府法記録の見出された熊本・岡山・加賀各藩の記録内容を検討した結果、幕府は自らの出版法を各藩に送りはしなかっただろうということを結論づけている。「研究の目的」に記した「江戸時代日本の出版法制の歴史について三都(江戸・京都・大阪)以外の日本全国規模における把握の見通しを立て」たものである。 「町に触れられなかった『御触書天保集成』寛政二年五月出版改革「町触」――山東京伝・蔦屋重三郎処罰の前提状況――」(400字詰原稿用紙40枚強)は、日本近世文学会における学会発表「町に触れられなかった寛政二年五月出版規制法」(口頭発表25分)の内容を増補改訂したものである。これまで町触があったと思われてきた『御触書天保集成』寛政2年5月法令が法令案の書留で、実際には町触されていないことを考証したもの。次年寛政三年に処罰された、当時の代表的作家山東京伝の洒落本三部作は寛政二年に準備されたが、この時、寛政2年5月法令が禁じた手法を用いて記された三部作は、幕府への対決姿勢でもなければ、弛緩しきった当時の人心に幕府を恐れるところが少なかったわけでもないことを明らかにし、京伝の処罰は、寛政2年5月法案の処罰方針を実際の処罰によって伝えた性格のものであることを明らかにした。「研究の目的」に言うところの「禁書と法制の関わりに注目した実証的考察を進め」たものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
幕府出版法の藩域への不伝達の実証については、当初の計画通りと言える。京伝・蔦重の処罰をめぐって、『御触書天保集成』という書物の性格に考察を加え、『御触書天保集成』という著名な法制史料の理解について修正を加え得たのは、想定外の研究成果である。
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今後の研究の推進方策 |
幕府法の伝達については、他方面からのアプローチをも行う予定である。 幕府の文芸処罰については、死罪となった講釈師馬場文耕の事例について考証を行い、従来の説を修正する用意がある。 その他、研究実施計画に記した通りに進めていく心積もりである。
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