研究課題/領域番号 |
19K00323
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
竹島 一希 京都府立大学, 文学部, 准教授 (10733991)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 東常縁 / 古今伝授 / 宗祇 / 東家流 |
研究実績の概要 |
今回の研究課題は「東家流『古今集』注釈書研究」と題して、遡り得る限り最も古い(狭義の)古今伝授の伝承者である東常縁の家(東家)に伝わった『古今和歌集』の注釈書を研究することを目的とする。堯孝直伝の二条派説は『古今集両度聞書』に残された一方、藤原為家―東胤行(素暹)以来の東家説はまとまった形として残されていない。しかし、幾つかの注釈書にその痕跡がとどめられており、本年度はそれらを精査することに費やした。 1、『或聞書中有所存抜書』(『曼殊院蔵古今伝授資料 第六巻』〈汲古書院・1992年〉) 東常縁から東元胤へ伝授された注釈書。この書が、東家流を考える上で、最も確実に跡づけられる資料である。 2、三条西家集成『古今集』注釈書(宮内庁書陵部、東京大学、広島大学に分蔵) 三条西家で集成された『古今集』の注釈書。『両度聞書』『古聞』といった宗祇に関わる正統的な注釈を記した横に、片仮名細字で注を増補する。片仮名細字注には、幾つか種類があるが、そのうち注の頭に○が付いているものが、1と一致する。 上記1、2を精査し、東家注の全貌を確認した。『両度聞書』『古聞』との比較を通して、東家注の独自性が浮かび上がる。東家注は、注釈の方向性は『両度聞書』等とおおむね一致する。しかし、東家注には、言葉の読み方に関わる注が見られる点、また「下心・裏説」に該当する注がほとんどない点で、『両度聞書』とは区別できる。この二つの特徴からは、常縁は、聞き手の元胤に合わせたレベル(初等から中等レベル)でしか講義しかなった可能性がある。このレベルでの注が明らかになったことで、常縁からの伝授においては、初等から中等レベルの『或聞書中有所存抜書』と、最高レベルの『両度聞書』という、少なくとも二種類のレベルがあることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年4月付けで、前任校より京都府立大学へと異動した。そのため、大学に備わっている資料等に差があり、特に2019年前半は基礎資料の購入や整理などに時間を費やす必要があった。後半は予定通りの進行となった。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、『永正記』の全文をチェックし、「東家聞書」に言及する箇所を抜き出す。そして、『或聞書中有所存抜書』、三条西家集成『古今集』注釈書、『永正記』の三書をまとめることで、東家流『古今集』注釈書の全体像を改めて考える。その上で、論文執筆にのぞみたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は異動して初年度に当たり、また特に年度末は新型コロナウィルスに関わる移動制限が出されたため、出張に赴く余裕がなかった。来年度は、東京そのほかに調査出張に赴きたい。
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