研究課題/領域番号 |
19K00323
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
竹島 一希 京都府立大学, 文学部, 准教授 (10733991)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 内外口伝歌 / 古今伝授 / 東常縁 / 三条西実隆 / 近衛尚通 |
研究実績の概要 |
本年度は視点を変え、「内外口伝歌」を研究した。「内外口伝歌」は、確実に常縁に遡ることのできる秘伝の一つである。 本書に関しては、近時、小髙道子氏が陽明文庫資料を用いて新説を提示している。その要諦は、従来原型とされた『古秘抄 別本』系統はかえって後出で、むしろ24首の和歌のみを掲げる「内外口伝歌共」(書陵部蔵)系統こそ原型であるという点にある。明応元年八月、実隆が宗祇所持の常縁自筆本を写した(奥書)ものが書陵部本である。常縁自筆本には24首のみが記されており、実隆は宗祇から口伝を伝えられた。 永正七年二月十二日、実隆は同書を徳大寺実淳へと伝えた(実隆公記)。その際、24首に注を付した。後、実淳から近衛尚通へと伝えられたらしい。同年十一月二十八日付けの尚通書写本が、陽明文庫(小髙氏紹介)と斯道文庫(川上新一郎氏紹介)に現存する。比較すると、内容と奥書に相違がある。斯道本奥書によると、斯道本は尚通から夢庵(肖柏)へ渡っている。内容面では、陽明本は24首歌注、斯道本はさらに1首歌注が加わり、計25首を収める。25首目の注文は『古今和歌東家極秘』に同文が見られる。実隆以来の24首歌注に1首歌注を加えたのは、尚通と考えられる。 近世期の『古秘抄 別本』では、斯道本25首目の注文が『両度聞書』の引用に改められ、26首目が付加される。但し、26首目のみ一つ書きの形式となっており、25首までと同様に扱うべきではない。また、斯道本の25首目の注文は、26首目の後ろに置かれ、25首目、26首目を統括する位置にある。 さらに、「内外口伝歌」の別本系統として、『古今和歌東家極秘』所収本がある。そこでは、18首+6首=24首の形に分かれており、しかも歌注は「内外口伝歌」よりも簡略である。東家伝来のこの形こそ常縁以来の最初期の形態であり、「内外口伝歌」等は実隆や尚通が変形を加えたものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ対策等で、勤務校の業務が増え、授業準備に時間がかかることに変化はない。出張についても、行おうと計画していた矢先、緊急事態宣言等により叶わなくなった。
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今後の研究の推進方策 |
資料は概ね揃っているが、研究の進捗が遅れている。最終年度は研究をまとめることに注力したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
出張費としてある程度の金額を確保している状況である。来年度は計画通り執行したい。
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