東常縁が宗祇へ伝えた『両度聞書』は、常縁の師の尭孝の説そのものであり、そこに常縁 説、東家説はほとんど含まれない。東家は、東胤行(素暹)以来、勅撰歌人を輩出する、 武家歌人の名家である。その東家に、家説がなかったとは考えにくい。今回見出された東 家『古今集』注は、最高の秘説である『両度聞書』には及ばないものの、それ故より多く の門弟に伝授されたと思しい。東家『古今集』注の発見によって、東家伝来の家説の内実、 低位の伝授の実態を知ることができた。さらに、東家『古今集』注は、他の注釈書に紛れ 込んでいる可能性もあり、これを基準とすることで新たなる注文が見つかることも期待で きる。
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