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2019 年度 実施状況報告書

新資料・旧蔵資料による『種蒔く人』主要同人今野賢三の研究

研究課題

研究課題/領域番号 19K00324
研究機関秋田県立大学

研究代表者

高橋 秀晴  秋田県立大学, 総合科学教育研究センター, 教授 (40310982)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワード今野賢三 / 小牧近江 / 金子洋文 / 種蒔く人 / プロレタリア文学
研究実績の概要

2019年度は、第一に、雑誌『種蒔く人』(1921年-1923年)刊行以前(1912年-1917年)の金子洋文宛て今野賢三書簡の翻刻と分析を行った。賢三は、洋文と別れてからわずか2か月しか経っていないにも拘わらず、「長いこと御無沙汰した。」(1913年1月16日付)と詫び、その間便りがなかったことを取り上げて「捨てられたのではないかと心悲しく」(同)なり、「兄を思ふや切々、忘却の糸を辿りて其面影にし(ママ/「す」とすべきを秋田方言の発音通りに「し」と表記したと思われる)がる。兄よ、僕の如きも捨てずにくれ給へ。」(同年2月17日付)と、あたかもラブレターのような語句を連ねている。また、洋文が故郷秋田の『秋田魁新報』に連載した「緑の秘密」という作品を東京の図書館で読んだり(1914年6月20日付)などしてもいる。以上から、賢三と洋文が、雑誌『種蒔く人』創刊のかなり前から強い絆で結ばれていたことが確認できた。
他方、洋文が武者小路実篤宅に寄宿していた1917年の賢三書簡には、「兄の先生の御作も先ず読みたいんですが。」(2月6日付)、「何卒私のやうなものでも御近づきになって頂くやう貴方の先生へ宜敷く。」(2月16日付)、「先生の作も読んでゐる。」「日本武尊も面白かった。」(3月8日)と、武者小路に言及しているものが散見される。洋文への友情は友情として、できれば武者小路と接点を持ちたいと願っている様子が窺える。以上、洋文宛て賢三書簡群の翻刻・分析により、文学専念を決意する前後の賢三の実相と、書簡の受信者である洋文の状況や賢三との友情の在り方について明らかにすることができた。
なお、小牧近江に関しては、賢三関係書簡のリストを作成した。また、有島武郎と武者小路実篤に関しては、基礎資料を収集し、それぞれと賢三・洋文との関係性について考察した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2019年度は、小牧近江・金子洋文の新資料、有島武郎と今野賢三の関わり、武者小路実篤と金子洋文・今野賢三の関わりについて調査・分析することを予定していた。
それに基づき、小牧近江の新規寄託資料、金子洋文宛ての今野賢三書簡の翻刻と分析を行った。有島武郎については、主に賢三宛て有島書簡と賢三の有島観を検討した上で両者の距離の変化を検証し、武者小路実篤については、洋文宛て武者小路書簡と洋文の随想等により、両者の関係性とそれに対する賢三のスタンスを検証した。また、研究成果として、「『種蒔く人』以前の金子洋文と今野賢三―洋文宛て賢三書簡が語ること―」(『秋田風土文学』第16号、2020年3月31日)を発表した。
以上のことから、本研究課題の進捗状況について、「おおむね順調に進展している。」と判断した。

今後の研究の推進方策

当面は、2019年度に引き続き、秋田市立土崎図書館所蔵の今野賢三書簡の翻刻と分析を行い、賢三の多岐にわたる人間関係の実際を顕在化させるとともに、年譜を補完したい。さらに、国立国会図書館、秋田県立図書館、あきた文学資料館所蔵の賢三関係資料等により、彼の文学活動全般について調査する。
また、2021年度は『種蒔く人』創刊100周年に当たるため、記念論文集が刊行(2021年10月)される予定であるので、本研究課題の成果に基づいた今野賢三論を執筆すべく、準備を進める。
なお、2020年度は、新型コロナウイルス感染症の影響で、取材、文献調査、学会参加・発表等に支障を来す危険性がある。状況によっては、研究計画を変更(資料整理を先行させる等)するなど、柔軟に対応したい。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] 『種蒔く人』以前の金子洋文と今野賢三-洋文宛て賢三書簡が語ること-2020

    • 著者名/発表者名
      高橋秀晴
    • 雑誌名

      秋田風土文学

      巻: 16号 ページ: 18-44

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 回顧 平成秋田の文学/あきた文学資料館特別展に寄せて2019

    • 著者名/発表者名
      高橋秀晴
    • 雑誌名

      秋田魁新報

      巻: - ページ: -

  • [学会発表] 秋田の近代文学2019

    • 著者名/発表者名
      高橋秀晴
    • 学会等名
      教員免許状更新講習
    • 招待講演
  • [学会発表] 平成に結実した秋田の文学研究2019

    • 著者名/発表者名
      高橋秀晴
    • 学会等名
      あきた文学資料館

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公開日: 2021-01-27  

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