研究課題/領域番号 |
19K00328
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
吉田 司雄 工学院大学, 教育推進機構(公私立大学の部局等), 教授 (50296779)
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研究分担者 |
服部 徹也 東洋大学, 文学部, 講師 (80823228)
高橋 修 共立女子短期大学, その他部局等, 教授 (90179474)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 近代文学 / 翻訳 / 探偵小説 / 冒険小説 / 書記言語 / 研究者交流 |
研究実績の概要 |
本研究は、言語の境界を超えて揺動する翻訳ディスクールの分析を、海外の研究者とも共同しながら推進しようとするものであるが、2020年度に研究成果を発表予定だったインドネシア・バリ島での第7回東アジアと同時代日本語文学フォーラムは新型コロナ感染流行のため2年続けて開催されず、国内における共同研究推進もほとんどできなかった。 そうした状況ではあるが、研究代表者・研究分担者はそれぞれに論文を発表した。また、研究代表者は東アジアと同時代日本語フォーラム第9回オンライン大会2021の東芝特別企画パネル「アジアにおける日本大衆文学・文化のポピュラリティ」にパネリストとして参加したが、これは韓国の共同研究者との関係に基づくものである。昭和文学会春季大会国際シンポジウム(オンライン)「東アジアにおける翻訳とアダプテーション」でも口頭発表を行ったが、これまでの研究経緯等をまとめたものである。 さらに、東アジアの文体を考察するうえで欠かすことの出来ない「漢字」を中心とした書記体系と日本近現代文学の関係について、非漢字書記圏の研究者の視点に注目した。具体的にはマカレスター大学客員教授Christopher J Lowy氏の博士論文「At the Intersection of Script and Literature :Writing as Aesthetic in Modern and Contemporary Japanese-language Literature」(ワシントン大学、2021)の第二章「An Appeal to the Eyes: The Japanese Script and Japanese-language Literature」の翻訳を行ない、研究分担者である服部徹也が著者との討議を重ねた。この成果を踏まえたワークショップを次年度に予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染流行に伴い、海外への渡航が許されず、本年度の国際学会での発表や海外研究者との交流を予定通りに実施できなかった。研究期間を1年延長し、当初の予定とは異なる形ではあるが、研究成果を公開する手立てを検討した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は最終年度にあたるため、研究成果を公開すると共に、今後の研究展開を模索するワークショップを開催する。 現在準備中なのは、日本近現代文学の文体を東アジアという観点から幅広く視野に収めるChristopher J Lowy氏の博士論文「At the Intersection of Script and Literature :Writing asAesthetic in Modern and Contemporary Japanese-languageLiterature」(ワシントン大学、2021)を出発点としたワークショップである。同博士論文は漢字・ひらがな・カタカナやフリガナなど、多様な構成要素から構築される書記日本語の紙面=文体が、物語の主題とどのように関わりあうかを総合的に問うたものである。崎山多美の沖縄口(ウチナーグチ)表記の問題や、日中にルーツをもつ少年のアイデンティティの揺らぎを現代中国語・簡体字を用いて表現した横山悠太作品、始皇帝の文字統一をモティーフに独自の新字を用いるなど実験的な文体で綴られた円城塔によるSF作品『文字渦』などについて、表記に着目した議論が展開されており、そうした作家・作品について造詣の深い日本近現代文学研究者の参加により文体とテーマの問題により多角的な検討を加えたい。また、Lowy氏が日本語表記体系を理論化するにあたって言語学の知見を参照していることに鑑み、日本語学を専門とする研究者の招聘を予定し、内諾を得ている。 さらに、海外の研究者との交流を深めるためのワークショップを別途開催することも検討中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画通りの国際研究集会参加や海外から研究者を招いてのワークショップ開催が新型コロナウィルス感染流行のため実施できず、計画を見直すと共に、研究機関を1年間延長したため。
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