散佚後、全国各地に散在する「九条家旧蔵古典籍」の探索を行った。新型コロナウイルスの感染拡大により実地調査が困難となったため、巷間に出現した当該研究に関連する可能性のある古典籍とそれらの調査研究とデータの収集を行った。 特筆すべきものとしては新たな九条家旧蔵本を見出した。従来認識されていた九条家旧蔵本とは異なる装訂である点が注目され、今後ともその僚巻の存在の博捜と個々の伝本についての考究が必要であることを確認した。現時点では『邦高親王集』『古来風体抄』『順徳院・後鳥羽院 中殿御会和歌』(鶴見大学図書館蔵)および数点の存在を確認している。また、従来知られていた九条家旧蔵本も博捜の結果、数点の新たな写本を各所で発見することが出来た。 また中世王朝物語の生成圏として鎌倉時代の九条家および西園寺家の存在が挙げられいるが、それに関連する研究として『雨やどり』の諸伝本の調査を行った。市古貞次旧蔵本・女子美術大学本・滝川君山旧蔵本を新たに見出し、その調査・報告を行った。そしてその本文の集成と校本の作成を計画し、底本となる伊達文化保存会本の調査を行った。 『風雅和歌集』の伝本に関連する研究を行った。鶴見大学図書館蔵・尊円親王筆、竟宴本『風雅和歌集』の、真名序と春上(残巻)の調査報告を行ったほか、その関連資料として江戸時代前期に古筆鑑定家により行われた、尊円筆『風雅和歌集』真名序・仮名序の模刻本の報告を行い、竟宴本の清書・下書きに至る様相と『風雅和歌集』撰定の過程を明らかにした。
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