研究実績の概要 |
1, 本年度は、昨年度に引き続き、新型コロナウイルス感染症の影響のため、計画していた調査を必ずしも十分に行うことはできなかったが、『寝覚物語』の校訂本文・注釈の執筆に注力して進めることができた。 2, 本研究の主たる目的である、前田家本を底本にした『寝覚物語』校訂本文・注釈の執筆は、前年度までの成果を継承しつつ、細部を見直し、より精度の高いものに仕上げていくことができた。既存の『寝覚物語』研究は、この物語の読解を深め、非常に意義の大きいものばかりであるものの、未だ、十分に考察が加えられていない箇所も多く存在する。また、『源氏物語』をはじめとした物語研究や、勅撰集・私家集・私撰集などの和歌研究も進んだことによって見直さなければならない箇所も散見される。さらに、欠巻部にかかわる新たな古筆断簡の発見も相次いでいる。それらを総合的に検討しなおすことによって、既研究のいくつかを見直すこともできた。 3, また、上記の校訂本文・注釈の執筆にあたって見出すことのできた解釈上の問題点については、論文としてまとめ、公開することができた。その一部は、『寝覚物語研究会会報』(第2号)として公刊した。本会報に収録できた論文は、以下のとおり。中西健治「寝覚物語注釈礎稿―「さりげなし」など―」、池田彩音「『夜の寝覚』における帝の後朝の文の歌の背景」。なお、本会報は、補助事業期間終了後も、発展的に継承しつつ、刊行を続けていく予定である。
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