本研究は、いわゆる「歌書」を主たる対象として、江戸時代に刊行された絵本と絵入り本の総体を把握し、その刊行史の消長や絵師ごとの特質、さらには出版書肆との関係性などを多角的に分析し、解明しようとするもの。既にこれまで高度な達成を見せてきた江戸の絵本研究に、今般新たに歌書の領域をカバーすることを目指している。 今年度も、前年度に引き続きコロナ禍の影響を受けて、国文研以外の所蔵機関における文献調査がほとんど実施できなかったが、かろうじていくつかの大学図書館・美術館等で資料熟覧の機会を得た。また、重要な関係文献として、合羽摺りの上方絵本(伝本稀)を収集した。具体的な主要研究業績は以下の通りである。 海野圭介・神作研一・粂汐里・小林健二編「国文学研究資料館所蔵碧洋臼田甚五郎文庫分類目録」(『調査研究報告』43号、573-620頁、国文学研究資料館学術資料事業部、2023年3月)は、種々の絵入り歌書刊本を含む碧洋臼田文庫の分類目録。国文学研究資料館の創立50周年記念展示図録『こくぶんけん〈推し〉の一冊』(2022年4月)には「〔素庵本三十六歌仙〕」を寄稿した。なお、新聞への寄稿「飛鳥山、幕臣たちの風雅」(『読売新聞』多摩版、2023年3月29日付朝刊)と、一般誌への寄稿(連載)の一例「〈てのひらの江戸 古典籍を旅する(27)〉勝川春章『錦百人一首あづま織』」(『俳句四季』39巻6号、東京四季出版、2022年5月)も挙げておく。
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