研究課題/領域番号 |
19K00345
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
青木 亮人 愛媛大学, 教育学部, 准教授 (90647364)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アメリカ日系移民 / 日本近代俳句 / 海外俳句 / 日米文化 / 日本近代史 |
研究実績の概要 |
本研究は、アメリカ日系移民一世が太平洋戦争時に強制収容所に収容された状況下において日本語短詩型文学にいかに触れ、何を求め、母国語で何を表現しながらどの点に触れないという選択をしつつ作品を発表したかを分析することで、日本短詩型文学の一側面を明らかにするとともに、特殊な環境下の日系移民一世の位相を分析することにある。研究二年目の令和二年度は上記目的の達成に向けて下記の調査及び分析を実施した、 (1)前年度に行ったアメリカ合衆国西海岸の強制収容所下における日系移民一世の母国語による短詩型文学の表象分析を行った際、一世移民の文化観の中でも特に季節感や風景描写に潜む人生観は、アメリカの一般的な季節感や人生観と異なると同時に、日本における俳句表現としての季節感及び人生観等をより純粋に、類型的に純度を高めた価値観を軸に詠む傾向にあることがうかがえた。 その際、当時のアメリカの一般的な季節感並びに人生観等を把握するとともに、日系移民一世の韻文表現における季節感等との差異を把握する必要もある。そのため、前年度から継続している比較分析戦前アジア各国の日本語圏俳句との比較分析とともに、当時の日本国内の俳句雑誌の確認に加え、アメリカの日系移民二世(英語を母国語とし、アメリカ国民として教育を受けた世代)の季節感や人生観を調査するとともに、日本語圏とアメリカの英語圏における季節感や風景描写に滲む人生観の差異等の比較分析を行った。 (2)上記内容について、オンラインにてポーランドのニコラウス・コペルニクス大学、ヤギェロン大学、ドイツのデュッセルドルフ大学、ボン大学、ミュンヘン大学、またアメリカのワシントン大学、ユタ・バレー大学、ルイス&クラーク大学、オクラホマ大学等で講演や授業、共同授業等を実施することで、日本語圏と他言語圏(特にアメリカ)の季節感及び風景描写の差異を調査分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和二年度は概要欄に記したように、日本語圏と他言語圏の季節感及び人生観の差異、特に日米両国における戦時下の短詩型文学の比較分析を行い、それらの知見を強制収容所内での日系移民一世の短詩型文学の解釈に活かし、令和初年度に収集した日系移民一世資料の分析を進めている。 ただ、昨年以来、世界的に新型コロナウィルスの感染状況が改善されず、令和元年度後半に予定していたアメリカでの現地調査及び記念館・博物館等での資料収集、また日系移民一世の子孫へのインタビューや各大学の専門家との詳細な打ち合わせ等がいずれも困難となり、研究予定の大幅な変更を余儀なくされた状態が続いており、オンラインを活用した最適な研究方法を取りながら最終年度の研究を充実させたい。
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今後の研究の推進方策 |
これまで収集した一次資料や文献、また各分野の先行研究の成果に加え、各国大学で実施した講演や授業を通して得た季節感等の差異を踏まえながら作品分析及びアメリカ日系移民一世の文化位相を分析しつつ、戦前台湾、朝鮮、満州等の植民地における日本語俳句や短歌に加え、日本国内の俳句雑誌を中心とする俳句作品の位相とも比較することでアメリカ日系移民一世の短詩型文学の特徴を浮き彫りにする研究を進める予定である。 また、強制収容所関連の博物館や記念館の未整理の日本語資料に短詩型文学資料が存在するかどうかを調査し、上記研究の充実を図りたい。 ただ、新型コロナウィルスによる世界的なパンデミックが収束せず、渡航等が困難な状態が続いているために当初の研究計画や推進方法等を大幅に変更する必要が生じている。オンラインでの研究方法を積極的に活用し、研究目標の達成に向けて最善の方法を採っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度からの新型コロナウィルスの拡大及びまん延により、複数予定していた国内外の資料調査及び研究発表、各国の大学研究者との打ち合わせ等が中止になり、旅費等を次年度に繰り越した。
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