研究課題/領域番号 |
19K00348
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
本井 牧子 京都府立大学, 文学部, 教授 (00410978)
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研究分担者 |
金光 桂子 京都大学, 文学研究科, 教授 (30326243)
柴田 芳成 大阪大学, 日本語日本文化教育センター, 准教授 (70448158)
中川 真弓 国際日本文化研究センター, 研究部, 日本学術振興会特別研究員(RPD) (20420416)
山本 聡美 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (00366999)
土谷 真紀 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (80757451)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 釈迦堂縁起 / 社寺縁起 / 社寺縁起絵巻 |
研究実績の概要 |
本研究は、16世紀に製作された社寺縁起絵巻を対象として、絵と詞との両面から絵巻を総体として読み解くことを目指すものである。清凉寺蔵『釈迦堂縁起』を主たる研究対象として、日本文学の研究者と美術史の研究者との連携により、絵と詞との精緻な注釈的読みを蓄積し、縁起絵巻を多角的にとらえるという方法をとる。2021年度は、撮影した『釈迦堂縁起』のデジタルデータをもとに、詞書と絵との検討を進めた。 3回にわたって開催したオンライン研究会(4月25日、7月31日、3月30日)では、詞書の輪読とともに、『釈迦堂縁起』およびその周辺の縁起絵巻に関しての研究報告が行われた。 第1回の研究会では、研究会メンバーの安藤秀幸氏より、嵯峨薬師寺蔵『薬師堂縁起』についての報告があった。安藤氏が住職を勤める嵯峨薬師寺は清涼寺に隣接する寺院であり、そこに蔵される『薬師堂縁起』は嵯峨天皇と弘法大師の開基伝承等を伝える美麗な絵巻である。これまで『釈迦堂縁起』の詞書を検討するなかで、清涼寺と地理的に近接する寺院の縁起や説話伝承、嵯峨野を舞台とする物語草紙などとの関連が指摘されてきたが、『薬師堂縁起』においても、清涼寺の釈迦像伝承との密接な関連が看取され、嵯峨野地域における縁起絵巻生成・享受の様相を俯瞰的にとらえる視点の必要性を再認識することとなった。その後、第3回の研究会において、『薬師堂縁起』の修理についての報告とともに、絵巻に基づく絵解き用の掛け幅についても紹介があり、今後研究会でも継続して検討することとなった。 第2回の研究会では分担者の土谷真紀氏により、『釈迦堂縁起』の異国描写を中心として、初期狩野派の表現方法を分析する報告が行われ、成果が共有されると共に、質疑応答が交わされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
『釈迦堂縁起』詞書の精読については、釈迦像の本朝での霊験譚を中心とする巻六を中心に、おおむね予定通り進行している。これまでの検討を通じて、『釈迦堂縁起』が清涼寺と直接関連する資料だけでなく、周辺の社寺縁起、物語草紙などをも利用して、詞書を編成している様相が立体的に浮かび上がってきている。美術史の方面からの絵の検討に加えて、『薬師堂縁起』といった新たな資料の紹介もあり、多角的な検討が可能となってきている。分担者および研究会のメンバーによる資料の蓄積・共有が進められると同時に、研究会での報告を通じて問題意識の共有がはかられており、全体的に順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、『釈迦堂縁起』巻六の詞書精読を完了させることを優先して行う。注釈作成とともに、巻六の依拠資料の検討を進め、そこから巻の結構や段の位相などを定位することを目指す。それと平行して、巻一について、詞と絵とを有機的に結びつけた読解を試行する。 『釈迦堂縁起』の後世における享受の問題を検討するために、『釈迦堂縁起』の写本・模写本などの調査・検討をも進める。具体的には、東京国立博物館所蔵の狩野養信一門による模本や、佛教大学図書館蔵本などを検討対象とする。また、『薬師堂縁起』など、清涼寺と地理的に近接する社寺の縁起絵巻について、テキストデータの整備などを進める。 また、詞書筆者の公助関連資料の探索と同時に、公助につながる天台のネットワークや資料にも視野を広げ、調査・検討を継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していた画像データが、所蔵先・撮影業者との調整の関係で年度をまたいでの納品となったため。次年度に画像を購入する予定である。
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