研究課題
本研究は、清凉寺蔵『釈迦堂縁起』を対象として、絵と詞との両面から絵巻を総体として読み解くことを目指すものである。最終年度にあたる2022年度は、『釈迦堂縁起』巻六の詞書注釈を完成させることを優先して研究を進めた。末尾の年代記の検討は残ったものの、絵巻本体については巻六の注釈初稿を作成することができた。詞書注釈では、応仁の乱を発端とする瑞像の罹災とその避難・修理にかかわる段について、瑞像の台座蓮弁の銘や浄教寺縁起といった周辺資料とともに検討が行われた。史実との整合性が確認されると同時に、説話叙述のレベルにおける差異も指摘され、依拠資料やその利用の実態について、さらなる検討が必要なことが確認された。また、物理的な障害がないにもかかわらず、瑞像を見ることができない人々がいるという特徴的な話型をもつ段については、『釈迦堂縁起』全体の構想にもかかわる話型であることが確認された一方で、そこに法性寺が登場することの意味などについては検討課題として残った。オンライン研究会(8月7日、3月27日)では、詞書の輪読とともに、『釈迦堂縁起』の模本についての研究報告も行われた。研究会メンバーの松岡知華氏により、東京国立博物館所蔵の木挽町狩野家関連の模本が、狩野典信の門弟を中心として製作されたものであることが明らかにされた。また、同じく研究会メンバーの村木桂子氏からは、佛教大学図書館蔵本の概要が紹介され、あわせて模本製作の場の問題にかかわって江戸期の出開帳についての報告も行われた。なお、2022年度の研究期間の終了に伴い、『釈迦堂縁起』全体の注釈完成を目指して新たな科研費を申請し、2023年度より新規科研「『釈迦堂縁起』の総合的注釈研究」を得て研究会を継続することが決定した。本科研で浮かび上がってきた問題を発展継承しながら『釈迦堂縁起』の総合的な読みを試みる計画である。
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日本語・日本文化
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早稲田大学大学院文学研究科紀要
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美術研究
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