本研究は近世期の復古的潮流について、学問と芸術的実践とを包括的に指し示す〈学芸〉の観点から検討を加えたものである。本研究を通じて、18世紀後半の国学者・好古家である橋本経亮の旧蔵資料1200点の総体を初めて明らかにし、また目録及び展示図録を刊行した。また近世を代表する国学者である契沖の遺著を伝える「契沖著述稿本類」(重要文化財)の調査研究を行い、契沖自筆稿本の断簡をあらたに発見した。更に灘の豪商であった吉田家の好古活動に関する検討を行い、国立歴史民俗博物館での企画展に協力した。このように本研究は、自国のいにしえへに向けられた日本人の関心の多様なありようを、資料に基づいて実証的に解明してきた。
|