研究課題/領域番号 |
19K00353
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
中丸 宣明 法政大学, 文学部, 教授 (80198184)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 雑報記事 / 三面記事 / 街談巷説 / 自然主義 |
研究実績の概要 |
調査途上であり、十全なかたちで具体的成果にかたちを与えるに至っていないが、2020年度においては、コロナ禍による移動制限、各地図書館・文庫の閲覧が難しくなったため一切の調査が不可能になった。結果として研究の遅滞は深刻な状況である。そこで研究計画の段取りを変更して、本研究の出口部分、つまり日本の近代小説の形成過程のうち、二〇世紀初頭部分の研究に着手することにした。既収集分の資料と一九世紀末から二〇世紀の文学状況の調査、主に小説テクストの分析を行うことによって、研究の進展をはかった。具体的には、一九世紀末の「深刻小説・悲惨小説」と言った文学現象にかんして、明治初期以来の新聞の「雑報」記事の報道のありかた、さらにその内容の分析を通じて、新聞の「家庭小説」の成立を考証し、二〇世紀初頭の日本の自然主義の成立、つまり田山花袋・島崎藤村・徳田秋声らの初期作品を分析し、それらが「家庭小説」との連環のなかで形成したことを、証明した。成果の範囲は、先に述べた三作家のうち島崎藤村の作品分析にとどまるが、今後田山花袋・徳田秋声へと広げていく。ただし最初に述べたように、本研究の中心である、明治期小新聞の雑報記事と文学作品・舌耕作品との関連の実証的研究は、資料調査が出来るようになってから、精力的に進めるしかないと思量している。そのために基本作業、具体的には作者演者の基本データの調査を進めている。今後のコロナによる研究環境の変化を見据えなければならないが、研究期間の延長についての検討も必要だと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍により、進行中であった日本館発行の新聞に付随するかたちで発行・配布(発売を含む)された「講談」や舌耕芸を中心にしたよみものの実態の調査、具体的には「会津市立図書館」「酒田光丘文庫」「国文学研究資料館」「国会図書館」等で資料調査がほぼ完全に不可能な状況になり、市中に残存する講談本・明治期戯作の収集も全国の古書市なども中止となり、遅滞のやむなきに至っている。一日も早く調査が可能になることを祈るのみであるが、現在出来ること、いわばこの研究の出口に当たる、日本自然主義の形成過程の研究を先取りするかたちで進行させた。
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今後の研究の推進方策 |
二一年度後半には、「会津市立図書館」「酒田光丘文庫」「国文学研究資料館」「国会図書館」等での資料調査が自由にる事を期待して準備を進める、市中に残存する資料の収集も鋭意進めていく。二〇年度における日本自然主義の形成過程と新聞小説との関係の調査研究は、島崎藤村で一定の成果を得たが、引き続き田山花袋・徳田秋声の問題を追及したいと思っている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍が収まった時点で、調査費および調査旅費の消化につとめる。またそれに代わる調査方法を模索する。
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