『古事記』と『日本書紀』の比較研究の一環として、両書に登場するスサノヲの役割と存在意義に焦点を当てた論考を発表した。スサノヲの神話的表現や文化的な影響を分析し、その古代日本社会における宗教的及び文化的位置付けを明らかにした。この研究は、古典文学における神話的要素の理解を深めるものである。次に、日本書紀の玉屋本に関する研究について述べる。玉屋本の書写状況の詳細な調査を行い、その結果、巻第一と巻第二の論考をすでに公表した。巻第三以降の分析は進行中であり、近い将来の発表を目指している。これらの論考は、テキストの物理的な側面だけでなく、写本の成立背景や影響にも光を当てるものである。また、生成AIを活用して、玉屋本を含む非卜部系の写本の諸本系統を統計的に分析する研究を進めている。この技術的アプローチは、写本研究において新たな方法論を提供し、写本間の関連性や差異を明確にするための有効な手段となる。さらに、本研究と平行して、言語統計学の研究を進めており、そこで得られた知見を文献学的研究に応用することを目指している。この交差する研究アプローチは、テキスト解析の精度を向上させるとともに、歴史文献のより深い理解に寄与することが期待される。以上の研究活動は、古典文献の解釈とその学術的な活用に新たな視点をもたらし、日本古典文学研究の発展に貢献している。今後も引き続き、これらの研究成果を発表し、学問的な議論を刺激することを目指す。
|