研究課題/領域番号 |
19K00358
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研究機関 | 東大阪大学 |
研究代表者 |
趙 夢雲 東大阪大学, 公私立大学の部局等, 教授 (80390152)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 上海 / 戦後 / 対日宣伝 / 引揚げ / 留用 / 改造日報 / 亜東協会 |
研究実績の概要 |
本研究は1945年から1949年までの5年間、上海における国民政府の対日宣伝活動、中国文化人の対日姿勢、引揚げを待つ邦人の動向と文芸活動を究明すべく、基礎資料の整備及び上海に設置された対日宣伝機関の実態調査を試みるものである。 二年目にあたる今年度は、本来、研究計画に従って上海档案館、北京国家図書館、南京第二歴史档案館と台北国史館での文献調査を重点的に実施し、さらなる研究資料の収集と整理を行うと同時に植民地文化学会において現地点の研究状況を報告する予定だった。しかし、長引く新型コロナウイルス感染拡大のため、航空各社の相次ぐ運休や未だに継続されている厳しい入国制限という未曽有の事態に遭遇し、当初予定していた資料調査と現地踏査が全く着手できず、研究発表も学会年度大会の中止により行うことができなかった。 そのため、現地知人の協力で新たに入手できた公文書に加え、過去に収集した文献資料の分析と精読に力点を置いた。また戦後邦人留用、引揚げ問題及び戦後上海に於ける対日宣伝機関関連の新資料も購入でき、昨年に続き基礎研究資料の整備を進捗させることができた。 上述した資料収集、分析作業と並行して、関連性のある日本国内の引揚記念施設(舞鶴・佐世保)に出向いて調査を行い、研究の基礎となる戦後国民政府の対日施策及び上海邦人居留民の動向を反映する「改造日報」の記事集成を完成し、一時活発的な活動を展開してきた対日文化工作委員会の軌跡を究明するための論考をその記事集成を手掛かりにまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルスの蔓延により、航空会社各社の減便と運航休止、PCR等の検査や強制的な二週間隔離を必須条件とする入国制限が今も続き、緩和や解除の目処が立っていないため、予定していた中国・台湾での資料調査ができなかったが、研究計画を調整しながら、主にこれまで収集した資料及び知人経由で入手できた一部の新資料を利用して研究作業を継続することができた。従って次年度の研究はおおむね予定通りに進行することが可能である。
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今後の研究の推進方策 |
本科研は次年度が最終年度を迎えることに備え、継続課題である対日文化工作委員会の後身だった亜東問題研究会と亜東協会の考察に着手すると同時に、可能ならば内外の図書館と公文書館において資料探索を再開し、研究の深化と集約をはかりたい。特に本年度に重点を置くのは研究成果の公開である。所属機関の研究紀要などの研究媒体及び所属学会の学会誌への積極的な投稿をはかるとともに、上海社会科学院歴史研究所が編集・発行する論文集への投稿も試みる。また、これまで収集した資料の整理・分析の結果を集約する研究書(仮題:『戦後上海における対日宣伝機関とその刊行物 解題・細目』)の刊行を目指す。ゆまに書房に計画書を提出して打診した結果、当該出版社の社内企画会議にて書誌書目シリーズの一冊として刊行することが決定された。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスによる世界的規模の感染拡大が続く昨今、資料調査と現地踏査の予定地である中国及び台湾では、航空会社各社が大幅な減便と運休を実施し、二週間の強制隔離を伴う入国規制も行われているため、予定していた上記の作業を中止せざるを得なかった。また、2020年7月に予定していた植民地文化学会での研究発表も年度大会の中止により研究報告の実施ができず、そのため次年度使用額が生じた。最終年度に当たる今年は、新たに修正、加筆した「改造日報」に関する論考に、中央宣伝部対日文化工作委員会及び亜東問題研究会、亜東協会を考察した論考を加え、改造日報社、改造出版社、対日文化工作委員会及び亜東協会等が発行した定期、非定期刊行物の細目をまとめた研究書(仮題:『戦後上海における対日宣伝機関とその刊行物 解題・細目』)を出版する予定である。図版加工費等を含む出版負担費用を科研費から支出する予定である。
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