研究課題/領域番号 |
19K00367
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊藤 徳也 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (10213068)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 審美 / 現代性 / 生活の芸術 / 生の技法 / 現代中国 / 日本文芸 |
研究実績の概要 |
本研究のキーコンセプト、キーワードである「審美現代性」の分析概念・用語としての有効性を検討した。「審美現代性」は、「芸術のための芸術」に代表される自己目的的衝動によって特徴づけられるが、具体的に、「生活の芸術」論説と「生の技法」論説の異同を歴史的に整理、検討するなかで、一定の有効性があるのを確認した。 20世紀以降の中国文化史の中で、日本文芸とトータルに最も広く深い関わりを持ったと考えられる周作人の日本文芸に対する考え方と態度を総合的に整理、検討した。単に日本文芸作品の翻訳・紹介が良質で、分量も多いということだけではなく、中国文学史中の重要作家として、日本文芸作品を自身の表現の中に見事に溶かし込むことによって、中国文学を豊かにした、と言える。 1980年代以降の中国はそれまでにない質量を伴って日本文芸との関わりを深めたが、総じて言えばそれは、細分化、形式主義化、そして大衆化、視聴覚化の傾向が強い。周作人の時代よりも、日本文芸研究の専門性は格段に高まったし、日本文芸への関心も微細なものにまで及ぶようになった。日本映画、宮崎駿、新海誠、川端康成、松本清張、村上春樹、吉本ばなな、青山七恵、綿矢りさ、金原ひとみらの受容に関して初歩的な調査を行った。以上の作家、監督に関しては、台湾、香港での状況も初歩的に調査した。作家によって、研究や評論の数が違い、それぞれの地域で注目される作家が違うのは興味深い。例えば、青山七恵は中国大陸における注目度が高いが台湾香港では低い。そのことが何を意味しているのかは分析できていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究のキーコンセプト、キーワードである「審美現代性」の分析概念・用語としての有効性を、一定程度確認したが、より多くの作品や事象に対する分析概念としての有効性を検討する必要がある。 現代中国における日本文芸の受容の具体例を、主に先行研究を調査することによって、一定程度の範囲で確認することができた。概要を押さえるためにはまだまだ数多くの事例を調査分析する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後も計画通りに推進していく予定である。新型コロナウイルス感染拡大に伴って、海外渡航が難しくなり、図書館や研究機関での調査が制限を受けることになったので、オンライン会議やインターネット上の資料の網羅的な収集、調査、分析に力点を置いて研究を進めたい。様々な工夫を凝らして、所期の目的に達したい。
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