研究課題/領域番号 |
19K00368
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
藤井 誠子 (佐野誠子) 名古屋大学, 人文学研究科, 准教授 (80359827)
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研究分担者 |
齋藤 智寛 東北大学, 文学研究科, 准教授 (10400201)
福田 素子 聖学院大学, 人文学部, 非常勤講師 (80837287)
北條 勝貴 上智大学, 文学部, 教授 (90439331)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 仏教霊験譚 / 金剛般若経集験記 / 法苑珠林 / 続高僧伝 / 偽疑経 / 金剛般若経霊験記 / 冥報拾遺 / 仏教志怪 |
研究実績の概要 |
今年度は、会合を開き、それぞれのこれまでの研究と、現在の研究の関心についての意見交換を行った。また他、メールを用いての意見のやりとり等も行った。 佐野誠子は、唐代の霊験譚集『金剛般若経霊験記』と、『冥報拾遺』について、書物としての性格を明らかにした。蕭ウ(王+禹)作とされる『金剛般若経霊験記』は、他の霊験譚集とは違い、伝達者のことをしるさないこと、また、これまでの霊験譚よりも虚構性の強い要素が含まれることを明らかにした。郎余令『冥報拾遺』については、唐臨『冥報記』の続篇を標榜しながらも、その内容の傾向にかなり大きな違いがあり、『冥報拾遺』の方がより、唐代当時の『金剛経』信仰状況を反映しているであろうこと、孝思想や、六朝にはみられない信仰精神があることを指摘した。また、これまでの六朝仏教志怪研究の整理として、六朝仏教志怪と唐代仏教志怪の関係について、『観世音経』から『金剛経』への変化と、それぞれの経典の信者による書き換えが行われているという学会報告を行い、単著『怪を志す』の第Ⅱ部においては、六朝仏教志怪の展開の整理、そして、唐代の仏教志怪・伝奇小説との関係についても見通しを示した。 齋藤智寛は、上記会合で「中国中世の仏教霊験譚に関する私見」と題する報告を行い、①『続高僧伝』感通篇の成書や編纂理念、②孝子説話の仏教化、の2点について、問題提起と今後の展望を行った。 福田素子は、夏期に西安・敦煌で唐代仏教の信仰のあり方について調査を行い、秋には単著『債鬼転生―討債鬼故事に見る中国の親と子―』を出版し、今後の研究に資する知見を募った。現在仏教における悪霊調伏譚の系譜を調査中である。 北條勝貴は、『法苑珠林』宿命篇・至誠篇の注釈作業を進め、儒仏道の交渉における鴉鳴占卜の民族経典化、同様の情況下におけるトラ表象の変容について、環境文化史の観点から論考を執筆した(いずれも未刊)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
それまで相互に面識のなかった研究者どうしを繋げることで、新しい認識が生まれた。代表者にとっては、それぞれのテキストの扱い方・読み方の違いを知ることは大きな刺激となった。また、いくつかの写本についての複写の入手も行え、来年度のための研究資料が準備できた。 また代表者、分担者ともに、一部の成果と関わる単著も公刊できた。
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今後の研究の推進方策 |
covid19の流行により、昨年度末に予定していた報告・調査の一部が実施できず、また今年度も会合や新規の調査の実施が困難なことが予想される。 もともとの申請時の研究費からの減額により、研究計画に盛り込んでいた中国・日本の研究者の招聘は行わない予定であったが、完全に実施できないことが確定した。 分担研究者とは、逆にオンラインツールを用いて、より密接な意見交換を行いたいと考えている。 全体の研究計画として、分担研究者からのそもそも霊験とはどのように定義すべきかという問いにも答えるべく7世紀以降の状況に重点を置く。特に、テキストの取材と加工の問題について、それぞれの担当する文献についての研究を進める。 代表者は、昨年度はあまり進められなかった『金剛般若経集験記』の研究に取り組みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
covid19により、3月はじめに予定していた台湾への調査・研究報告講演のための渡航ができなくなったため。収束後にあらためて行く予定である。
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