研究課題/領域番号 |
19K00375
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
小松 謙 京都府立大学, 文学部, 教授 (00195843)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 水滸伝 / 版本 / 翻訳 / 注釈 / 金聖歎 / 李卓吾 / 批評 |
研究実績の概要 |
当該年度においては、まず『水滸伝』と密接な関わりを持つ『金瓶梅』の研究を推進し、中国古典小説研究会大会で発表「金瓶梅成立考」を行うとともに、論文「『金瓶梅』成立論序説」を『和漢語文研究』第17号に発表、更に前年度まで継続していた課題「水滸伝本文の研究」の成果の集大成として著書『水滸伝と金瓶梅の研究』をまとめて研究成果公開促進費に応募し採択された。同書は、長期にわたる綿密な校勘作業を踏まえて『水滸伝』諸版本の系統を初めて全面的に明らかにし、あわせてその本文の変化を通して、近代的な小説がいかにして生まれ、現代中国語がどのようにして成立したかを明らかにするとともに、『水滸伝』と深く関わる『金瓶梅』本文の内容からその成立過程を明らかにし、作者を特定したもので、画期的な内容を持つとともに、本課題を推進する上で不可欠の内容であり、同書の完成は前課題の成果であるのみならず、本課題の重要な一部とも見なすべきものである。 更に、本課題の目的である詳細な注釈を加えた『水滸伝』の全文翻訳にも着手し、第七回まで作業を完了した。これも書籍化し、前述の書籍とあわせて本年10月に刊行すべく準備中である。この注釈は、主要版本6種の全文にわたる完全な校勘記と、容与堂本・金聖歎本に附された批評の全訳を含んで、文中に現れる語句や制度・出典などに関わる詳細な考証、更には異同が生じた原因や金聖歎の文学思想などに関わる精密な分析を含み、これまで内外で行われてきた『水滸伝』研究にはない全く新しい研究と呼ぶべきものである。 このほか、白話文学に関わる課題として、主催している敦煌変文研究会の成果をまとめ、「大目乾連冥間救母變文訳注(三)(四)」を『京都府立大学学術報告 人文』第71号と『和漢語文研究』第17号に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
元来本年度は前課題の成果を整理し、それを踏まえて訳注制作に着手する予定であったが、想定より早く前課題の成果をまとめることができ、更に関連する『金瓶梅』に関わる研究も大幅に進めて、中国古典小説研究会において研究発表を行って、それらの成果を書籍『水滸伝と金瓶梅の研究』にまとめ、研究効果促進費に応募、採用されて刊行が決定した。 更に、訳注の作成も当初の想定より迅速に進み、一年目にして早くも書籍一冊を超える分量の翻訳・注釈をまとめ、迅速に刊行すべく準備を整えて、二年目のうちに第一冊を刊行する見通しを得た。 以上のように、一年目の研究実績は当初の見込みを大幅に超えるものであり、その成果は二年目のうちに二冊の書籍として公刊される見通しがついている。この点で、当初の見込みを超えた進展をみなしてよいものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
『水滸伝』訳注の制作を進める。具体的には、すでに実施済みの版本調査の結果を踏まえつつ、新たに参加することになった東京大学U-PARL協働型アジア研究プロジェクト「水滸伝諸版本の研究」から新たに得られるであろう知見をも生かし、できるだけ多くの『水滸伝』版本の調査を進めつつ、可能な限り正確な訳文と、すべても問題点をえぐり出す注釈を作成することを目指す。 あわせて、訳注制作過程で発見した課題に関する研究を進め、論文の形にまとめることをも目指す。
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